新たに開発に参加したのは、レイコップ・ジャパンでブランドマネジャーを務める新舘俊輔さん(39)だ。新舘さんはマーケティング会社、日本情報流通(東京都渋谷区)を経営する。日本で本格展開を模索していた李さんと知人を介して知り合い意気投合。コンサルティング契約を結び、製品開発全般にかかわるようになった。同年9月、李さんと新舘さんの2人が中心になって日韓共同の新機種開発チームを日本で発足させた。
李さんの目標は「日本のすべての世帯にレイコップを置いてもらうこと」。成熟した日本の家電市場では新しいジャンルの製品で、日本の消費者に受け入れられる可能性はある。だが、日本人消費者は家電製品の多様化で、製品を選別する目が厳しい。製品情報も簡単に入手できる。「目新しくても、使いやすさなどで消費意欲を刺激できなければ見向きもされない」(大手家電量販店)という。裏を返せば、ハードルの高い日本市場でレイコップの普及が進めば、世界市場の成果が見込める。
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新舘さんは「機能の改善は最小限にとどめ、むしろデザインなどにこだわって毎日楽しく使い続けられるような製品に進化させたかった」と振り返る。
日本での開発会議には、営業部門も参加した。顧客相談センターなどから報告される利用者の声を集約しているからだ。消費者の生の声は多岐にわたり、製品の細かい部分への注文も多かった。製品開発に役立つ声を抽出する作業は想定以上に難しかった。
なかなか声を絞りきれず、開発の元となる手書きの製品スケッチは何枚にも及んだ。日本で完成度の高い製品スケッチを作らなければ、開発の実行部隊がいる韓国で試作機が作れず、開発が前に進まない。商品開発のスピードを重視する韓国の企業文化もあり、「焦りもあった」(新舘さん)という。