経団連の米倉弘昌会長と連合の神津里季生事務局長は5日、東京都内で会談し、2014年春闘が本格的に始まった。4月の消費税増税を控えて景気の腰折れを防ぎ、デフレ脱却をはかりたい政府は企業に賃上げを要請。これを追い風に連合は5年ぶりに給与を一律に底上げするベースアップ(ベア)を要求した。経団連は春闘指針で6年ぶりにベアを容認したものの実施には慎重な企業が多い。ベア実施をめぐり労使の厳しい攻防が予想される。
会談で米倉氏は「企業業績の改善が賃金の引き上げにつながる経済の好循環をつくり出すよう努力する」と賃上げに前向きな姿勢を表明。会談終了後、記者団に「月例賃金(月給)でも一時金(ボーナス)でも(報酬が)全体的に上がればいい」と語り、賃上げの内容は個別企業の実情に応じて判断すべきとの考えを示した。ベアは時間外手当や社会保険料などに跳ね返り固定費が膨らむため、経営側は中長期的な業績改善が見込まれないと踏み切れない。増配を求める株主への配慮もある。
一方、神津氏は「月例賃金にこだわる。働く者ひとりひとりの明日への信頼の証だ」と主張し、ベア実現に強い意気込みを示した。業績に左右される一時金では業種や業態間の格差が広がる恐れがあり、一時金の支給制度そのものがない非正規労働者も多い。生活費を賄い、労働側は将来の生活を考えるもとになっているベアを上げなければ国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費の回復はできないとみる。