今年の労使フォーラムの議論で明らかになったのは、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」によるデフレからの脱却を成功に導くという「労使ともに背負う社会的責任」(基幹労連)が、“同床異夢”に陥りかねない危うさをはらんでいるということだ。
28日午前に労使フォーラムの会場で講演した経団連の米倉弘昌会長は、安倍首相が掲げる「経済の好循環の実現」という言葉を引用し、「十分な話し合いを重ねながら、自社の状況にかなった“解”を見いだしていただきたい」と労使に呼びかけた。
アベノミクスが描くデフレからの脱却の鍵は、国民所得の向上により、国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費が上向くことだ。それには、賃上げが1回限りとなる「一時金」になるか、基本給が引き上げられる「ベースアップ(ベア)」になるかによって大きな違いがある。
物価が上昇し、税負担が高まるなかで、国民の所得の向上が経済を下支えするという共通認識はあるものの、「一時金による所得増は消費に回らない」(連合の古賀伸明会長)とベアにこだわる労組側に対し、ベアに慎重な企業もまだ多い。