2001年に福岡市で1号店をオープン、「Zoff」のインターメスティック、OWNDAYS(オンデーズ)と並ぶ「新御三家」として業界を席巻してきたジェイアイエヌも常に順風満帆だったわけではない。リーマン・ショックに伴う景気悪化が深刻化した08年ごろには、競合の追撃で安さの魅力が薄れたことが重なり、09年8月期まで2期連続で最終赤字に陥った。
このとき、柳井氏の下へ相談に赴いた田中社長は「(39円まで下落した)今の株価は将来性がないと思われている」と厳しい言葉を突きつけられ、同社の進むべき方向を冷静に再確認するきっかけになったという。
国内市場が見通せない中、さらなる成長には海外事業の拡大が不可欠だ。ファーストリテイリングとは売り上げ規模で30倍以上の開きがあるが、米国進出がスムーズに運べば、米国事業の黒字化に手間取るファストリに先んじることもできる。だが必要なのは積極策だけではない。目の前の課題から目をそむけず、足場固めへの目配りを怠らない経営感覚も欠かせない。(井田通人)