「厳しい処分を免れたいと考えた。何とかしなくてはという思いでいっぱいだった」
元専務は愛知県警の調べに、当時の心境をこう供述。10月、不正競争防止法違反罪で略式起訴された。
賄賂総額は5千万円
ただ、今回の一件はやむにやまれず、というものでもなさそうだ。実は元専務はこの事件の5年ほど前から、地方政府幹部や税関幹部に贈賄を繰り返していた。初対面であいさつ代わりに現金を渡すこともしばしば。県警の調べにも「(賄賂は)02年ごろから計16回渡した」と供述しており、各方面に総額約5千万円相当の賄賂がばらまかれた疑いがある。
元専務は賄賂の原資を現地法人の経費から架空の交際費などの名目で捻出。中国語が話せないことから、贈賄の日時や方法は現地法人の中国人従業員に事前に相手方と調整させていた。賄賂は多くの場合、直接職場に届けさせていた。
このような露骨な手口にもかかわらず、フタバ産業本社は長年にわたって元専務の贈賄工作に気づかなかった。このため、元専務が賄賂を渡したとされる16回のうち15回は公訴時効(5年)を経過し、立件されることはなかった。