試算では、単純な撤去なら5000億~6000億円で済むとみられ、最も経済的。だが、首都高速の菅原秀夫社長は「6割が通過といっても、4割は都心環状内で乗り降りする。この事実は無視できない」と否定的だ。
実は、国交省、首都高速ともに資金問題の解決になると期待を寄せているのが、東京オリンピックの招致だ。首都高が1964年の東京五輪開催に間に合わせるために建設された経緯もあり、「実際に招致が決まればインフラ整備が始まり、政府からの支援が期待」(国交省幹部)できるからだ。ただ、それも石原慎太郎都知事が10月末で辞任し、「五輪招致の“顔”がなくなった」(首都高速首脳)ことで不透明感が漂う。
調査研究委の提言が出れば両論について検討されるが、国の財源が制限される中で方程式を解く変数が多く解を得るには紆余(うよ)曲折が予想される。(平尾孝)
首都高の老朽化、再生に関する提言や議論内容
【国交省・有識者会議】
・都心環状線は高架橋を撤去して地下化
・首都直下型地震対応などの観点から国家プロジェクトとして推進
・民間活力を生かし、世界都市・東京にふさわしい再生を図る
・地下化では用地買収のいらない大深度地下の活用も検討
・税金に極力頼らず、料金収入を中心とした対応を検討
【首都高速道路会社・調査研究委員会】
・大規模修繕、大規模更新を基本的な考えとする
・都心環状線など6路線を抽出し、修繕か更新かを比較検討
・ライフサイクルコストを意識した検討
・修繕や更新の際の代替交通ルートの確保なども検討
・提言を今年末までにとりまとめる