これに対し、首都高速側は大規模修繕や更新を念頭に置き、「技術者目線で、少ないコストで効果を最大限発揮できるように極めて現実的な議論」(涌井教授)を進めている。具体的には、都心環状線、羽田線など老朽化が目立つ6路線を抽出して損傷状況、維持管理の効果、渋滞や事故の発生頻度、代替ルートの確保などの観点で修繕か更新かを決める。こちらは今年末に提言をまとめる予定だ。
国交省と首都高速で対策内容は大きく異なるが、老朽化に対する危機意識は共通している。1日約100万台の交通量がある首都高は総延長301キロで、都心環状線、羽田線などは完成後40年を超え、30年超の路線も半数以上。さらに、痛みやすいとされる高架が全体の79%、大型車の交通量は一般道の5倍と悪条件も重なる。
国交省、首都高速いずれの解決策をとるにしても、最大のネックは資金だ。特に環状線高架部分を全面地下化した場合の総工費は4兆3000億円とも試算され、JR東海の東京-名古屋のリニア新幹線の5兆4000億円に匹敵するビッグプロジェクト。