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地方議会から目が離せない
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政府・与党協議会に臨む自民党の石破茂(いしば・しげる)幹事長(中)。来春の統一地方選を前に自民党による地方議会の改革は静かに進んでいる=2014年7月28日、国会内(大里直也撮影)
政務活動費の不正やセクハラやじ、果ては選挙違反、危険ドラッグ(脱法ドラッグ)使用容疑で逮捕と、地方議員・議会の不祥事が続く。来春の統一地方選を控えた「真っ当な」候補予定者には肩身の狭い思いだろうが、一方で自民党による静かな地方議会の改革も進んでいる。
自民党本部は3月、ある通達を地方組織に送った。「憲法改正には国民運動の盛り上がりが不可欠だ」として、地方議会で憲法改正の早期実現を求める意見書の可決を要請する内容だった。
意見書はあくまで国会などに対する意見書であり、法的拘束力はない。だが、その数を調べると、地方の実態が浮かぶ。今年に入って早期改憲の意見書を可決したのは47都道府県と20政令市の計67議会のうち19議会に上り、本会議で否決されたのは1議会のみだった。
地方議会は圧倒的に自民党系が強い。総務省の昨年末の調査で都道府県議2648人(欠員除く)の46.7%が自民党だ。市区町村レベルでは無所属が最多だが、自民党系列の議員が多くを占める。
党本部が発破を掛けたにもかかわらず、早期改憲を求める意見書の可決は半分以下だった。それでも今までにない動きであり、遅ればせながら憲法改正を党是とする政党の意地を示した。
ところが、安倍晋三政権が集団的自衛権の行使を可能にする閣議決定を行った7月1日を前に、地方議会のある「事実」が報道された。1718地方議会のうち、閣議決定に反対・慎重な意見書を可決した数が「191」(6月30日のNHK)だというのだ。共産党議員の提案が多いとはいえ、自民党系が強い地方議会の1割超が政府に反旗を翻した形だ。
そこで調べてみた。47都道府県・20政令市の議会に限ると、今年に入り閣議決定に反対・慎重な意見書を可決したのは5議会だった。逆に否決したのは38議会に上った。全数調査ではないが、NHKや「200超」としたテレビ朝日の報道とは違った印象だ。
ちなみに公平・公正を旨とする放送法を順守しているNHKが、閣議決定反対・慎重の意見書を否決した議会数や「早期改憲を求める地方議会が相次いだ」と報じた形跡はない。
自民党本部は6月には別の通達を出した。地方議会で「自治基本条例」(まちづくり条例などの名称もある)が安易に制定されないよう注意を促す内容だ。
なぜ同条例の制定が問題なのか。中には住民投票(市民投票)の規定を設け、一定の居住実績がある外国人に参加資格を与える自治体がある。総務省は実態を把握せず、詳細は不明だが、少なくとも川崎市や千葉県我孫子市、大阪府岸和田市など30を超える自治体が外国人の参加に道を開いているとみられている。
条例に基づく住民投票の結果に法的拘束力があるわけではない。だが、「平成の大合併」で是非を問う際などに多用され、その結果が尊重される例が相次いだ。実際に外国人が参加した例もある。
国政選挙の投票権が日本国民に限定されていることは憲法の規定からも明らかだ。外国人参政権付与に積極的だった民主党の鳩山由紀夫氏(67)さえ、首相だった2010年6月、地方参政権も外国人には認めないとする答弁書を閣議決定した。だが、「外国人参政権の代替制度」とも言える住民投票の規定が一定数の自治体にあることを、該当地域の住民はどれだけ気づいているだろうか。
国防と密接に関わる事案を地方議会が決する場合もある。これが外国人に左右されていいはずがない。統一地方選では、「外国人参政権」を廃止、もしくは拡大させないとの観点で候補者を選ぶのも無意味ではないだろう。(酒井充/SANKEI EXPRESS)