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人間関係に影響与える「3人目」は誰なのか ポール・ハギス監督 映画「サード・パーソン」

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人間関係に影響与える「3人目」は誰なのか ポール・ハギス監督 映画「サード・パーソン」

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「テレビシリーズにするつもりはなかった。登場人物のつながり方が肝だから。137分に編集するのは大変だったよ」と語るポール・ハギス監督=2012年11月21日(提供写真)  人間の心の奥底にへばりついた憎悪をその作品を通してじっくりと見据えてきたポール・ハギス監督(61)の新作「サード・パーソン」は、パリ、ローマ、ニューヨークを舞台に男女3組の不安定な人間関係を交錯させながら、やがて個々の関係を1つの線でつなげ、思いがけない結末へと導く大人の恋愛ミステリー。SNAKEI EXPRESSの電話取材に応じたハギス監督は「そんな人間関係の設定などあり得ないと思う人もいるでしょう。ならば、実際に何が映画の中で起きているのかを、見る人に考えてもらいたかった。それが僕からのメッセージさ。ラブストーリーのふりをしながら、サスペンスに仕立て、謎を解くヒントを配していった。注意深く見てほしい」と、なかなか挑戦的だ。

 パリの高級ホテルで執筆中のピュリツァー賞作家、マイケル(リーアム・ニーソン)と、愛人で作家志望のアンナ(オリビア・ワイルド)。ローマでは、米国人の会社員、スコット(エイドリアン・ブロディ)と、バーで知り合った美女、モニカ(モラン・アティアス)。そしてニューヨーク。息子の親権を争い、裁判費用を工面するためメイドとして働く元女優のジュリア(ミラ・クニス)と、元夫のリック(ジェームズ・フランコ)-。どの男女も個性的な背景を持ち、一見なんのつながりもなさそうだが…。

 いつも関心があったこと

 ハギス監督は「個々の人間関係に影響を与えている人物は実は誰なのか?ということにいつも関心があるんだ。つまり“3人目”は誰なのかとね。それは僕の創作意欲の源なんだ」と語り、本作はいつか作るべくして作った映画だという。第三者を意味するタイトルを付けた理由もそこにある。ハギス監督は「マイケルには自分が抱いた自然な感情を退けてしまうもう一人の自分がいる。実際に日記を三人称(サード・パーソン)で書いてますよ。オリビアだって『なんで幸せではない方向へわざわざ向かってしまうのか』と悩み、独自の解釈で演技に臨んでくれた」と指摘したうえで、見る人には「愛のために他人とどう付き合うべきかを考えてもらいたかった」と力を込めた。

 宿泊先のホテルでマイケルのいたずらが引き金となり、アンナがマイケルの部屋から自室まで素っ裸で走って戻らなければならなくなったシーンはとりわけ印象的だ。

 日本の漫画「島耕作」シリーズにもこんなアンナを想起させる場面があることを知ったハギス監督は、大笑いしながら「なんでこんなアイデアを思いついたのか自分でも分からないんだ。僕は愛人とホテルで同じことを経験したこともないしね。そんなことがあればいいなと個人的に思うけど。マイケルがゲームを仕掛けたんだよ。アンナも裸を楽しんでいるでしょう。愛を交わすのに一番いいのは必ずしもセックスそのものではないんだよ」と解説してくれた。6月20日、全国公開。(高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS

 ■Paul Haggis 1953年3月10日、カナダ生まれ。脚本を担当した2004年「ミリオンダラー・ベイビー」(クリント・イーストウッド監督)と自身が監督・脚本なども務めた04年「クラッシュ」が2年連続で米アカデミー賞最優秀作品賞を受賞。「クラッシュ」は最優秀脚本賞も受賞した。06年、脚本を手がけた作品にイーストウッド監督の「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」がある。「007/カジノ・ロワイヤル」では共同脚本も担当。

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