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指導者として人間的に成長 アンジェイ・ワイダ監督 映画「ワレサ 連帯の男」

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指導者として人間的に成長 アンジェイ・ワイダ監督 映画「ワレサ 連帯の男」

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撮影中のアンジェイ・ワイダ監督=2012年6月27日(アルバトロス・フィルム提供)  ポーランドのアンジェイ・ワイダ監督(88)が、造船所で働く一介の電気技師から労組幹部、大統領、ノーベル平和賞受賞者へと、恐らく本人も考えていなかったであろう激動の道のりを歩んだレフ・ワレサ氏(70)の若き時代にスポットをあて、家族との日々を通してその実像に迫った。SANKEI EXPRESSの電話取材に応じたワイダ監督はワレサ氏の魅力について「冷戦当時、ソ連影響下の共産主義政権を相手に、実に効果的に対話して、東欧民主化へと導いた唯一の指導者だった。私はそんなワレサ氏の人間としての不思議な側面を描きたかった」と語った。

 自由を求めて闘う

 1970年12月、ポーランド政府は、物価高騰に反発した労働者たちの抗議行動を武力で鎮圧した。双方に冷静になるよう呼びかけていたワレサ(ロベルト・ビェンツキェビチ)は検挙された挙げ句、当局に協力するよう誓約書への署名を強いられる。そんなワレサも次第に天性の政治的センスや人心掌握術を発揮し、労働者たちのリーダーとしての自覚を強めていく。やがては80年に結成された、共産圏初の自主管理労組「連帯」の委員長となり、自由を求めて闘う反体制運動の象徴になっていく。

 ワイダ監督が本作の時代設定を、70年から、総選挙を経て非共産政権が誕生、民主化が実現した89年までとしたのは、「ワレサ氏の人間としての成長に焦点を当てたかったし、それが映画の最大のテーマなのだから」と説明した。連帯の一員としてワイダ監督個人としても89年は国会議員に当選し、思い出深いものとなったので、ハイライトとしてそこで映画の進行を止めたいと考えたという。

 孤独じゃない

 まるで登場人物に乗り移ってしまったかのような、ビェンツキェビチや、ワレサ氏の妻を演じたアグニェシュカ・グロホフスカ(34)の自然な演技が印象的だ。「俳優たちには『学歴がないとか、自分たちは労働者だとか、そんなことは何の意味も持たないと認識してほしい』と意識を徹底させたんだ。大切なのは、搾取されないように自分たちの利益を守ろうという気持ちを大切にし、日々学びを重ね、人間として成長していくことだとね」。ワイダ監督は役作りの一端を説明した。

 題材の重苦しさとは裏腹に、さまざまなポップな音楽がBGMでかかるのも気になるところだ。「当時、若者たちは自らの考えを歌で自由に自己表現していた。だからやはり自由を求めてきた労働者たちは決して孤独な存在ではないんだということを、僕は訴えたかったんだ」。4月5日から全国順次公開。(高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS

 ■Andrzej Wajda 1926年3月6日、ポーランド東北部のスヴァウキ市生まれ。第二次世界大戦中には、対独レジスタンス運動に協力、戦後、クラクフ美術大学に入学した後、ウッチ国立映画大学に転学し卒業。57年「地下水道」でカンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞。59年「灰とダイヤモンド」でベネチア国際映画祭国際批評家連盟賞受賞。81年「鉄の男」でカンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞。

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