ポーランドのアンジェイ・ワイダ監督(88)が、造船所で働く一介の電気技師から労組幹部、大統領、ノーベル平和賞受賞者へと、恐らく本人も考えていなかったであろう激動の道のりを歩んだレフ・ワレサ氏(70)の若き時代にスポットをあて、家族との日々を通してその実像に迫った。SANKEI EXPRESSの電話取材に応じたワイダ監督はワレサ氏の魅力について「冷戦当時、ソ連影響下の共産主義政権を相手に、実に効果的に対話して、東欧民主化へと導いた唯一の指導者だった。私はそんなワレサ氏の人間としての不思議な側面を描きたかった」と語った。
自由を求めて闘う
1970年12月、ポーランド政府は、物価高騰に反発した労働者たちの抗議行動を武力で鎮圧した。双方に冷静になるよう呼びかけていたワレサ(ロベルト・ビェンツキェビチ)は検挙された挙げ句、当局に協力するよう誓約書への署名を強いられる。そんなワレサも次第に天性の政治的センスや人心掌握術を発揮し、労働者たちのリーダーとしての自覚を強めていく。やがては80年に結成された、共産圏初の自主管理労組「連帯」の委員長となり、自由を求めて闘う反体制運動の象徴になっていく。