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アンネの日記破損「恥ずべき行為」現地から警鐘 アウシュビッツ日本人ガイド、自著も被害

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アンネの日記破損「恥ずべき行為」現地から警鐘 アウシュビッツ日本人ガイド、自著も被害

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国立アウシュヴィッツ博物館の公認ガイド、中谷剛さん。後方に見えるのは、「ARBEITMACHTFREI(労働は自由への道)」と記されたゲート(池田祥子撮影)  国内外に波紋を広げる「アンネの日記」や関連書籍の破損事件に、第二次大戦当時、多くのユダヤ人が連行されたポーランドのアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所跡地の博物館で日本人唯一のガイドを務める中谷剛さん(48)も心を痛めている。「悲劇を教訓にした歴史の継承」を目的に、現地で活動を始めて20年近く。事件の被害品には中谷さんの2つの著作も含まれていた。「非常に残念。恥ずかしい行為だ」。中谷さんは「こうした犯罪を許さないという姿勢が必要だ」と感じている。

 神戸市出身の中谷さんは、小学6年のときにナチスによるユダヤ人らの大量虐殺(ホロコースト)について学び、関心を抱いた。

 20歳の大学生だった1987年、初めてアウシュビッツを訪問。91年には勤務先会社を退職し、ポーランドに移住した。

 アルバイト先の先輩男性がアウシュビッツ強制収容所からの生還者だったこともあり「歴史の伝承に自分も関わらなければ」と決意。97年、アウシュビッツ博物館初の外国人ガイドとなり、日本人旅行者らに当時の社会情勢や時代背景なども含めて解説してきた。

 今回の事件で被害に遭った著作は「ホロコーストを次世代に伝える」「アウシュヴィッツ博物館案内」の2作品。それぞれ、推定110万人以上のユダヤ人らが殺害されたアウシュビッツ強制収容所の内部や歴史の説明、ガイドとして活動する自身の思いなどをつづっている。

 「私の本には生還者の談話も多数掲載されている。破損事件が、その人たちに向けられた暴力ならば恥ずかしい」。東京都などによると、2作品は練馬区や東久留米市の図書館で破られているのが確認された。

 中谷さんは昨年末、国内外から約430人が参加した被爆地・広島での国際シンポジウムで講演し、歴史継承の大切さについて説いたばかりだった。それだけに、日本にもユダヤ人への偏見が存在することを示すような形となった今回の事件に、憤りが募る。

 「国の違いを問わず、人種的な偏見や差別は決して許されないが、これまでなくならなかったことも事実。(社会は)今回の行為を人ごととしてはならない」。中谷さんは語気を強めた。

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