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40~60代の夫婦の絆は意外ともろい 映画「ビフォア・ミッドナイト」 リチャード・リンクレーター監督に聞く

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40~60代の夫婦の絆は意外ともろい 映画「ビフォア・ミッドナイト」 リチャード・リンクレーター監督に聞く

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 恋人同士に扮(ふん)したジュリー・デルピー(44)とイーサン・ホーク(43)によるラブロマンスの人気シリーズ第3作「ビフォア・ミッドナイト」。ラストを飾る本作で2人は晴れて夫婦となるが、ふとしたことがもとで生じた亀裂が2人の関係を一気に打ち砕いていく。リチャード・リンクレーター監督(53)はSANKEI EXPRESSの電話取材に「この作品でもカップルの関係を飾らずに、鮮烈なタッチで描いたつもり」と力強く語った。

 列車の中で出会った米国人のジェシー(ホーク)とフランス人のセリーヌ(デルピー)。ウィーンを舞台に一夜限りの逢瀬を描いたのが「恋人までの距離(ディスタンス)」(1995年)。その9年後、パリでの再会をつづった「ビフォア・サンセット」(2004年)。さらに9年後を描いた本作では、夫婦となり双子の娘に恵まれた2人が、バカンスで訪れたギリシャを舞台に結婚の理想と現実について激論を交わす。

 物語は前2作と同様に、ほぼ2人の会話だけで怒濤(どとう)のようにつづられていく。長年連れ添った夫婦間のコミュニケーションが、言葉ではなく、「間」を読んだり、阿吽(あうん)の呼吸で、相手の意図を推し量る手法がとられるのが一般的な日本人とは実に対照的だ。

 「ジェシーの場合、聞いてほしい話があったり、語らずにはいられない何かがあったんだ。それは米国文化からくるものかもしれないですよね」。リンクレーター監督はその意図を説明した。小津安二郎監督(1903~63年)の作品に抱く日本人像にも言及し、「沈黙という形でもコミュニケーションを取ることができるのは理想的だろう。幸せな気持ちでいられるのならば話す必要はないのだから」と指摘した。

 人生はその先も続く

 日本には「熟年離婚」という言葉があり、実際、パートナーの双方が新たな生き方を模索するケースが見てとれる。リンクレーター監督は米国でも事情は同じだといい、子育てを終えて第二の人生のあり方をうっすらと考え始めた40~60代の夫婦の絆は、一見堅固に見えるが、実は意外ともろい場合があると警鐘を鳴らす。「人生はその先も長く続くのだから、40~60代の夫婦が『これは私が望んでいた人生だったのだろうか?』と振り返るのは仕方がないこと。もし幸せでなければ人は何かを探し求めるでしょう。それぞれのやり方で微妙な時期と折り合いをつけるしかない。自分自身がどんな人間かがまさに問われているのですからね」

 シリーズでは、恋愛、離婚、結婚、子育て、家族…と人生の大きなテーマを描いてきたリンクレーター監督。もし続編があるとすれば、日本のサラリーマンならば定年を迎えたであろう還暦前後のジェシーとセリーヌを描く気持ちはないのだろうか? 水を向けると、「やってみたいけど、分からないなあ。だって20年後でしょう? まだまだ随分先だからなあ」。1月18日、全国公開。(高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS

 ■Richard Linklater 1960年7月30日、米ヒューストン生まれ。95年「恋人までの距離(ディスタンス)」でベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀監督賞)に輝く。2004年の続編「ビフォア・サンセット」では、米アカデミー脚色賞にノミネート。主な監督作は、1993年「バッド・チューニング」、2003年「スクール・オブ・ロック」、11年「バーニー」など。※映画紹介写真にアプリ【かざすンAR】をインストールしたスマホをかざすと、関連する動画を視聴できます(本日の内容は6日間有効です<2014年1月22日まで>)。アプリは「App Store」「Google Playストア」からダウンロードできます(無料)。サポートサイトはhttp://sankei.jp/cl/KazasunAR

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