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未来に胸ふくらむ情熱のステージ シャネル・ピグマリオン・デイズ グランドフィナーレ2013

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未来に胸ふくらむ情熱のステージ シャネル・ピグマリオン・デイズ グランドフィナーレ2013

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シャネルのリシャール・コラス社長(右端)にうながされ、ステージに集まった5人の俊英。左から千葉清加、小林侑奈、福田悠一郎、長尾春花、山本耕平(深谷善宣さん撮影、提供写真)  クリスマスを彩るモミの木も、新しい年の訪れを祝うマツのこずえも、日を追うごとに厳しさを増す寒さの中に粛然とした姿を示し、若々しい息吹を象徴し、孤高の品格を表すかのようだ。いずれも、一年中ずっと変わることのない緑をたたえているが、その葉は絶えず入れ替わる。変わり続けることで変わらない姿であり続け、未来に向かって不断の歩みを進めていく。時の流れは、高みを極めようとする精神の営みとともに刻まれて、大いなる実りがもたらされるのだ。

 東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールで開催されている音楽プログラム「シャネル・ピグマリオン・デイズ」は、豊かな才能に恵まれた若い音楽家をよりすぐり、年間を通じて演奏の機会を与え、会場を満たす温かなまなざしと拍手の中で自らを研(みが)いていく。音楽の高みに迫ろうとたゆまぬその背を押し、今年で9年目を数えるが、取り組むテーマや演奏会の選曲など芸術的な事柄にとどまらず、ステージパフォーマンスや社交性、身だしなみをはじめ全人格的な鍛錬と魅力の伸長にも意を注ぐ。

 ピグマリオンとはギリシャ神話に語源を持ち、才能を信じ、支援して、開花させる人を意味する。

 シャネルの創始者、ガブリエル シャネルは無名時代のピカソやストラビンスキー、コクトーらに手をさしのべ、新しい芸術の創生をもたらした。12月4日に行われた「グランドフィナーレ2013」は、その精神にのっとって1年の歩みを進めた5人の俊英による総仕上げのステージだ。成長を果たした喜びと感謝の思いが舞台からあふれ、壮麗な響きが感動を深いものにしていく。

 「レパートリーを広げたいと取り組み、常に自分の限界を超え続けなければならないという父の教えを実践しました」とバイオリンの千葉清加(さやか)は、りんとした音色に、やわらかな表情を含ませて印象的だ。しなやかでぬくもりのあるピアノの響きに豊かな詩情をたたえる小林侑奈は「幅広い時代の作品に挑戦し、さまざまな課題を見つけ、音楽を奏でることの喜びが深まった」と感謝を口にする。

 バッハの無伴奏と弦楽器による室内楽作品を並べ、全6回の演奏会を構成したバイオリンの長尾春花は「孤独と向き合い、音楽を分かち合うという両極端に同時に挑戦しながら、作品に最もふさわしい響きをいつも追い求めていました」と手応えを口にする。ドイツ留学を予定している福田悠一郎は「苦手としていること、乗り越えなければいけない課題に挑戦した1年でした。ここで得たものを生かして新たな挑戦をしたい」とバイオリンの手にさらなる飛躍を誓う。

 来年2月に大作オペラで主役デビューを控えたテノールの山本耕平も「困難と向き合うことを自分に課しながら、10年、15年先に自分が大切に歌っていく世界を探り、その糸口を見つけました」と語り、それぞれが大きな成果を手にし、旅立ちに胸を膨らませる。

 来年度の参加アーティストは5人。ピアノは内匠慧(けい)と池永夏美、チェロの伊藤悠貴、バイオリンの会田莉凡(りぼん)に、バリトンの加耒(かく)徹が名を連ね、内外のコンクールで優勝歴を持つなど、いずれ劣らぬ才能が集う。(谷口康雄/SANKEI EXPRESS

 ■福田悠一郎(バイオリン) ポンセ(ハイフェッツ編)「小さな星」、ワックスマン「カルメン幻想曲」(ピアノ:大須賀恵理)

 「あたたかなお客さまを前にして、緊張の中にも音楽の流れを見渡す余裕が芽生えました。音楽づくりをより深く考えられ、成長ができたと感謝しています」

 ■山本耕平(テノール) チレア「フェデリーコの嘆き」~歌劇「アルルの女」から、ベルディ「父のこの手は」~歌劇「マクベス」から、カルディッロ「カタリ」(ピアノ:平川加恵)

 「いろいろな言語や時代の作品を取り上げ、その度にたくさんの出会いや発見をしながら、自身の可能性を探ることができました」

 ■長尾春花(バイオリン) バッハ「シャコンヌ」~無伴奏バイオリン・パルティータ第2番から

 「バッハの無伴奏全6作品を演奏でき、作曲者が言いたかったことがより広い視野で理解できるようになりました。自分の音に責任を持つという意識もさらに強くなりました」

 ■小林侑奈(ピアノ) ショパン「3つのマズルカ」作品59、ガーシュイン(ワイルド編)「アイ・ガット・リズム」

 「今の自分のさまざまなカラーをお伝えしたいと、ステージに立ち続けました。一つ一つの演奏会から得るものがあり、次に向かう思いも高まっています」

 ■千葉清加(バイオリン) ドビュッシー(ハルトマン編)「亜麻色の髪の乙女」~前奏曲集第1巻から、ラベル「ツィガーヌ」(ピアノ:永野光太郎)

 「いつもあたたかく迎えられ、包まれるような感覚で演奏ができ、とても幸せを感じています。自分自身に挑戦を続けることができ、とても充実した1年でした」

 【ガイド】

 ■「シャネル・ピグマリオン・デイズ2014」 2014年2月15日(土)14:00~伊藤悠貴(チェロ)。17:00~加耒徹(バリトン)。2014年2月22日(土)14:00~内匠慧(ピアノ)。17:00~会田莉凡(バイオリン)。無料・抽選制。応募:シャネル銀座 HP www.chanel-ginza.com。応募期間:2014年1月6日まで。当選発表:2014年1月中旬から同20日までの間(東京都中央区銀座3の5の3 シャネル銀座ビルディング4階) (電)03・3779・4001。※4月以降の公演は公式HP参照

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