クリスマスを彩るモミの木も、新しい年の訪れを祝うマツのこずえも、日を追うごとに厳しさを増す寒さの中に粛然とした姿を示し、若々しい息吹を象徴し、孤高の品格を表すかのようだ。いずれも、一年中ずっと変わることのない緑をたたえているが、その葉は絶えず入れ替わる。変わり続けることで変わらない姿であり続け、未来に向かって不断の歩みを進めていく。時の流れは、高みを極めようとする精神の営みとともに刻まれて、大いなる実りがもたらされるのだ。
東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールで開催されている音楽プログラム「シャネル・ピグマリオン・デイズ」は、豊かな才能に恵まれた若い音楽家をよりすぐり、年間を通じて演奏の機会を与え、会場を満たす温かなまなざしと拍手の中で自らを研(みが)いていく。音楽の高みに迫ろうとたゆまぬその背を押し、今年で9年目を数えるが、取り組むテーマや演奏会の選曲など芸術的な事柄にとどまらず、ステージパフォーマンスや社交性、身だしなみをはじめ全人格的な鍛錬と魅力の伸長にも意を注ぐ。
ピグマリオンとはギリシャ神話に語源を持ち、才能を信じ、支援して、開花させる人を意味する。