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表現が難しいから丁寧に作り上げました 映画「MONSTERZ モンスターズ」 藤原竜也さんインタビュー

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表現が難しいから丁寧に作り上げました 映画「MONSTERZ モンスターズ」 藤原竜也さんインタビュー

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結婚を発表したタイミングの取材で、藤原竜也(たつや)さんは「心境に変化はあまりないんですよ」と照れた=2014年4月16日、東京都港区(寺河内美奈撮影)  どこか精神が壊れてしまったシリアルキラー役がすっかり板に付いてきた感じだ。俳優、藤原竜也(たつや、32)は山田孝之(30)とダブル主演を務めた「MONSTERZ モンスターズ」(中田秀夫監督)で、まなざし一つで他人を意のままに動かすことができる超能力者を熱演した。藤原は「作品自体は本当に見ていて怖い内容なのですが、全体的には笑って見られるようなタッチで仕上がっているんですよ。山田君とも『不思議だね』とよく話したくらいです」と太鼓判を押した。

 迷ったら現場に入る

 韓国の人気スター、カン・ドンウォン(33)とコ・ス(35)の主演で大ヒットした韓国映画「超能力者」(2010年、キム・ミンソク監督)をリメークしたのが本作だ。特殊な能力を持つがゆえに孤独に生きることを強いられてきた「男」(藤原)の前に、生まれて初めて自分の力がまったく通じない引っ越し屋の配達員、終一(山田)が現れる。終一は、自分が思うままに支配できる世界を守ろうと躍起になる「男」から執拗な攻撃を受け、大切な人物までも奪われてしまう。「男」への復讐を誓う終一にも別の特殊な能力があり…。

 今回で中田監督とのコンビは2作目となる。「『男』というキャラクターに関しては、監督からいただいた大事な役どころだと思っています。自分の目を使って他者を操り、世界を制するという、これまた特殊なキャラクターを表現することは確かに難しいですよ。でもそれこそが中田監督の世界観にマッチしたものでもあるわけです。相談を重ねながら、丁寧に作り上げていきました」。中田監督がどのように作品を構築していくのか、間近で確認することが楽しみだったそうで、迷いが生じたら、あれこれ考えず、まずは現場に入ってしまおうと腹をくくっていたという。

 正直に言えば、自分の演技に確信が持てなかったときもあった。人間を操る際の目の表情がそうで、藤原は「合成カットも多かったので、出来上がった映像を見てみないと、何とも判断がつかなかった」と振り返る。中田監督の熱の入れようは半端ではなかった。「一つの場面で何十カット、何十枚も、僕の目の表情を撮ってくれました。『竜也君、もっと目を見開いて』『もっと感情的に』『もっと攻撃的に』『もっと見たい、見たい』と言って、中田監督は撮影してくれたんです」。はしゃぐといったら語弊があるかもしれないが、撮影を楽しんでいる姿はまるで映画少年のようで、それを見ていると、藤原たちも自然と頑張ろうという気持ちが高まっていった。

 何事も斜に構えて

 山田との初共演も心待ちにしていたそうだ。「終一は『男』に絶対的に操られることなく、考え方もまったくぶれない、心の強い男という設定です。僕が抱いていた山田君のイメージそのままでした」。山田の演技を見ていてなかなか真似はできないと痛切に思ったのは、とてつもなく長い間、緊張感を持続させることができることだった。「終一は最初から最後まで追い詰められて、僕の暴走を止めて、大切な人を守らねばならないわけです。山田君は一緒にいて頼もしかったし、強い男そのものでした」。藤原は脱帽といった風情だ。

 本作では徹底した性善説に立つ終一が、「男」の胸にかすかに残っている良心を掘り起こしていく。藤原の人間観は意外にも「男」と同様、「屈折」がキーワードらしい。「僕は根が悪いやつだからなあ。基本、何事に対しても斜に構えてしまう。ストレートには対峙(たいじ)しないですよ。でも、僕の屈折した部分は自然と演技に出てきて、映画や演劇にも反映していると考えています」

 出会いを重ねて変化

 20歳になるまでに、何度も俳優を辞めようと考えた。「10代の何も物事を知らない青年が蜷川幸雄という演出家に出会い、戯曲でいえば寺山修司、唐十郎、三島由紀夫へと次々に取り組みました。トップレベルの天才たちの世界観を表現するよう求められても、若い僕には難しい。楽しい青春時代を送っている同世代を尻目に、こんな過酷な世界から逃げ出したいと思いましてね」。年齢を重ね、さらに深作欣二(1930~2003年)、野田秀樹(58)といった別のタイプの天才たちとの出会いを重ねるうちに、考え方に変化が生まれ、今では表現の奥深さに楽しさすら覚えるようになった。「無限に広がる天才たちの世界観を知りたい」。5月30日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:寺河内美奈/SANKEI EXPRESS

 ■ふじわら・たつや 1982年5月15日、埼玉県生まれ。蜷川幸雄が演出した「身毒丸」の主役オーディションでグランプリを受賞後、舞台で活躍。映画は、2000年「バトル・ロワイアル」(日本アカデミー賞の主演男優賞と新人俳優賞を受賞)、03年「バトル・ロワイアルII 鎮魂歌」、06年「デスノート」前・後編、09と11年「カイジ」シリーズ、10年「パレード」など。

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