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【まぜこぜエクスプレス】Vol.8 「作品を売れる商品に」

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【まぜこぜエクスプレス】Vol.8 「作品を売れる商品に」

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工房集の大倉史子さんの作品(中央)をデザインしたBEAMSの新作ショーツ(左、山下元気さん撮影、提供写真)  ≪価値観変える BEAMS×工房集コラボ≫

 キュートな赤いさくらんぼとアメリカンチェリー。そして、かわいらしい骸骨。新しいライフスタイルを提案する人気ファッションブランド「BEAMS」の新作ショーツは、アーティストの大倉史子さんが描いた作品をデザインに採用した。大倉さんは、ハンディキャップを持った人たちが所属し表現活動を仕事とする「工房集(KOBO-SYU)」のメンバーだ。“BEAMS×KOBO-SYU”のコラボはどうやって誕生したのか。一般社団法人Get in touch理事長の東ちづるが紹介する。

 ファッションにデザイン

 きっかけは6年前。偶然に見つけた工房集のアーティストたちの作品があまりにも魅力的だったので、「これをファッションにデザインしたアイテムがほしい」と思いつき、友人だったBEAMSのクリエーティブディレクター、窪浩志さんを誘って、埼玉県川口市にある工房集へと出かけた。

 工房集は、社会福祉法人「みぬま福祉会」が運営する「川口太陽の家」の分場として2002年にスタート。「どんな障害のある人でも受け入れる」と門戸を開いている。

 工房集を訪ね、同じく作品に魅せられた窪さんは何度も通った。「どうすれば作品を生かして、おしゃれな商品がつくれるのか」と、デザイナーと話し合い、12年にコラボ商品が実現した。

 第1弾は田中悠紀さんの作品「茶太郎」をコットンのブロード地にプリントしたボタンダウンシャツ。茶太郎は田中さんが生活しているグループホームで飼われている犬だ。田中さんは、大好きな茶太郎をずっと描き続けている。

 工房集のスタッフ小和田直幸さんは「コミュニケーションが苦手な彼らにとって、表現することは生きるための切実な行為。だから人の心をつかむのだと思う」と語る。

 変な平等主義に違和感

 商品化する作品を選ぶ基準について、窪さんは「売れないと意味がない。売れそうなものを選んでいる」と言う。商品として世に出るのは、一部のアーティストの作品だけ。

 「選ばれない人がかわいそう」という声もある。だが、小和田さんは「変な平等主義には違和感を覚える。ふつうの社会ならあり得ない」と言い切る。「僕らは一人一人のメンバーに対しては常に平等。だけど作品についての評価は外部に任せていいと思う」とも。

 工房集に行ってみると、それぞれのハンディキャップに対してとても丁寧に配慮されていることがわかる。利用者を「仲間」「メンバー」と呼び、温かな空気が流れている。けれども、ビジネスはクールだ。小和田さんいわく「どう見られるかという視点を大切にしている」。そういう意味でも、対等なのだろう。

 「障害者が頑張りましたみたいな出し方をしてしまうと、いつまでたっても、状況は変わらない」

 BEAMS×KOBO-SYUのコラボは、既存の価値観を変えるための挑戦でもある。(一般社団法人「Get in touch」理事長 東ちづる/SANKEI EXPRESS

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