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「防衛産業」海外へ 基準を明確化 武器輸出新原則を閣議決定

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「防衛産業」海外へ 基準を明確化 武器輸出新原則を閣議決定

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森本敏(さとし)前防衛相  政府は4月1日、実質的な全面禁輸方針とされる武器輸出三原則に代わる「防衛装備移転三原則」を閣議決定した。防衛装備品の第三国への移転に際し、政府に義務付けられている事前同意の手続きで例外を設け、国内企業の国際共同開発・生産への参加を促進する。

 新原則は(1)国連安保理決議の違反国や紛争当事国には移転しない(2)平和貢献・国際協力の積極推進や我(わ)が国の安全保障に資する場合に限定し移転を認め、透明性を確保しつつ厳格審査(3)目的外使用および第三国移転について適正管理が確保される場合に限定―の三本柱で構成される。

 慎重な審議が求められる重要案件は政府の国家安全保障会議(NSC)で輸出の可否を判断。輸出する場合は結果を公表する。それ以外の装備品の輸出件数や輸出先などの全体像も年次報告書として公表し、透明性を確保する。

 武器輸出三原則に代わる防衛装備移転三原則は、これまでの「例外措置」の積み重ねにより武器輸出の考え方が複雑化したため、基準を明示し再整理したものだ。基準が明確になったことで、国内企業にとっては防衛装備品の輸出がしやすくなるほか、海外進出も促進される可能性が広がる。

 救難飛行艇を輸出

 新原則により「我(わ)が国と安全保障面での協力関係がある国に対する救難、輸送、警戒、監視、掃海に関する協力」のための装備品輸出が可能になった。

 ヨットで遭難したニュースキャスターの辛坊治郎(しんぼう・じろう)さん(57)の救出で知られる海上自衛隊の救難飛行艇US2は、波の高い荒れた海上でも離着水できる世界最高水準の性能を誇る。政府はインドに輸出する方針だ。

 今後は法令上は武器と位置づけられる「敵味方識別装置」を装備したまま輸出することができるようになり、インドとの調整が円滑に進みそうだ。

 そのほか、航空自衛隊が2014年度に配備を予定するC2輸送機や海上保安庁の巡視艇などについても、シーレーン(海上輸送路)沿岸国への輸出が期待される。

 共同生産が容易に

 新原則では、防衛装備品を輸出相手国から第三国に移転する際に義務づけている日本政府の事前同意手続きが「平和貢献・国際協力の積極推進」「部品を融通し合う国際的なシステム参加」などの場合は不要となる。

 日本の防衛産業は現在、F15戦闘機やヘリコプター、パトリオットミサイルの部品を米国企業のライセンスを受けて生産している。米国の生産打ち切りなどで他国が部品を日本から調達したい場合も、事前同意がなくなればスムーズに輸出できるようになる。

 武器生産をめぐっては、国防費縮減という世界的な流れの中で、生産コスト低下につながる国際共同開発・生産が主流だ。防衛産業側には「政府の事前同意が面倒すぎて他国から嫌がられる」といった不満があったが、これからは国際共同生産に参加しやすくなる。

 国際機関に迅速提供

 「国際連合、その関連機関、国連決議に基づいた機関」への輸出も可能になる。念頭にあるのは、国連の南スーダン派遣団などの平和維持活動(PKO)の関連組織だ。

 海外派遣された自衛隊が現地で浄水セットやトラック、ブルドーザーなどの貸与や提供を求められた場合、旧三原則では、官房長官談話で例外と位置づける必要があった。今後は迅速性が確保される。

 小野寺五典(いつのり)防衛相(53)は1日の記者会見で「これまで以上に平和貢献、国際協力に寄与し、米国などとの防衛装備・技術協力を積極的に進めたい」と語った。(小田博士/SANKEI EXPRESS

 ≪森本敏前防衛相「例外措置やめ手続き迅速化」≫

 新原則では、旧原則の2つの問題が解消される。現状では防衛装備品の海外移転の際に不都合さがあり、例外化措置を重ねざるを得なかった。例えば、国際貢献目的で海外に派遣された自衛隊が任務終了後、装備品を現地に提供するのも武器輸出にあたった。新原則では、移転の可否に関する普遍的な原則を明らかにした。官房長官談話による例外化措置をやめられ、手続きも迅速化される。

 第2に、F35戦闘機のように国際的には主要装備品開発の大半は多国間の共同開発だ。だが、日本企業が参画しようとしても日本製部品が第三国の紛争当事国に移転する可能性があり、ビジネスチャンスが失われてきた。在日米軍のF15戦闘機のメンテナンスは韓国が行っている。日本はいろいろな国にビジネスを肩代わりされている。

 民主党政権下で例外が包括化された。自民党からすと民主党にしてやられた数少ない分野だったため、安倍晋三政権は思い切り原則を書き換え、諸問題を解決したいと考えた。結果、残された課題の第三国移転も可能になった。(談)

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