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【オウム法廷再び】仮谷さん事件 平田被告公判 中川死刑囚「申し訳ない」遺族に謝罪
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1995年の目黒公証役場事務長、仮谷清志さん=当時(68)=拉致事件など3事件に関わったとして逮捕監禁罪などに問われたオウム真理教元幹部の平田信(まこと)被告(48)の裁判員裁判の第4回公判が1月21日、東京地裁(斉藤啓昭(ひろあき)裁判長)で開かれた。死亡した仮谷さんに麻酔薬を投与したとされる元幹部、中川智正死刑囚(51)が出廷し、「故意に殺害したことはありません」と説明、麻酔薬の副作用で死亡したとの認識を示した。また、「誠に申し訳ない」と遺族に謝罪した。
確定死刑囚への証人尋問は極めて異例で、裁判員裁判では初めて。地裁は死刑囚の心情への配慮や警備面などから、証言台と傍聴席の間に遮蔽(しゃへい)板と防弾パネルを設置した。
検察側の冒頭陳述によると平田被告らは95年2月、脱会しようとした女性の居場所を聞き出すため兄の仮谷さんを拉致した。中川死刑囚は「車内で麻酔薬を注射した。遺体を焼却し、湖に流したのも私です」と説明した。証言によると、仮谷さんは3回「助けて」と声を上げ、車内で「もう抵抗しない」と2回言ったが、中川死刑囚は計画通り麻酔薬を注射。教団施設で15分ほど目を離した際に死亡したという。
平田被告の役割は「拉致に使ったのとは別の車を運転した。遺体を燃やしたときに着た服を燃やすのを手伝ってくれた」と話した。ただ、役割分担の打ち合わせに平田被告が参加したかは「分からないが、いなかった記憶もない」とした。
拉致に使う予定のレーザー銃は平田被告の試射で効果がないことが判明。「そこが引き際だった。やめておけばよかった」と振り返った。仮谷さんの長男、実さん(53)も被害者参加人として公判に加わったが、質問はしなかった。
≪拉致認識が最大争点 井上死刑囚の尋問カギ≫
異例となる裁判員裁判での死刑囚尋問が始まった。1月21日に東京地裁で開かれたオウム真理教元幹部、平田被告の第4回公判。検察側は目黒公証役場事務長拉致事件の実行犯、中川死刑囚に、拉致前の打ち合わせ状況などについて尋問したが、死刑囚が「記憶がない」と答える場面も。来月(2月)出廷する指揮役、井上嘉浩死刑囚(44)への尋問でどこまで「核心」に迫れるかがカギとなりそうだ。
拉致事件をめぐって平田被告は「(拉致の)認識の共有はなかった」と主張。事前に、公証役場事務長の仮谷清志さんを拉致することを知っていたかどうかが、最大の争点となっている。
検察側の主張では少なくとも拉致前に2回、打ち合わせの機会があったとされる。(1)拉致前夜に教団施設で行われた「説明」と(2)拉致直前の「役割確認」だ。
中川死刑囚の尋問で検察側は(2)について質問。「ワゴン車の中で井上君(嘉浩死刑囚)が説明しました」としつつも、平田被告が同席していたかは「ちょっと分かりません」と述べた。
仮谷さんの遺体を燃やした際に使用した作業着を、平田被告と焼却した際のやり取りについてもたびたび「覚えていません」「記憶はないです」と答えた。
一方、第2、3回公判に出廷した中村昇受刑者(47)=無期懲役確定=は(1)について、平田被告に「(仮谷さんを)教団施設に連れてくる」と伝えたと説明。「拉致という言葉は使っていないが、拉致だと理解したと思う」とした。
2月3、4日には、検察側が(1)(2)ともに同席していたと主張する井上死刑囚が出廷する。事件当時の平田被告の行動を詳細に把握しているとみられるが、法廷でどこまで証言を引き出せるかが、注目される。(SANKEI EXPRESS)