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同性婚議論再燃 全面承認への道遠く
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米ユタ州ソルトレークシティー(州都)
米国で同性婚をめぐる議論が再燃している。連邦最高裁は昨年(2013年)6月、州が認めた同性婚を連邦政府が認めないことを違憲と判断し、同性婚承認の流れを後押しした。また先月(2013年12月)以降、ユタ州とオクラホマ州で同性婚を禁じる州法などに違憲判決が出ており、流れは勢いを増している。しかし最高裁は現段階でも州が同性婚を禁じることの合憲性の判断は示しておらず、論争に完全に決着がついたわけではない。米国では保守層を中心に同性婚への反対は根強く、全50州のうち33州では同性婚に制限を加える法律が存在することも現実だ。オバマ政権は国内外で同性愛者の権利擁護を訴えてきたが、ジレンマを抱えているといえる。
最高裁は昨年(2013年)6月、同性婚に道を開く歴史的な判決を下した。連邦政府の「結婚防衛法」が結婚関係を異性間に限定していることを違憲と判断。ニューヨーク州が認めた同性婚カップルの遺産相続で異性婚カップルと同様の優遇措置を認めるよう決定した。
米国ではこの判決後、「同性婚カップルには異性婚カップルと同様の権利が認められるべきだ」との主張が勢いを増した。同性婚を承認する州の数は当時の12州から現在は17州まで増え、米ギャラップ社が昨年(2013年)7月に行った世論調査では同性婚支持は54%と過去最高を記録。結婚防衛法が成立した1996年の27%から倍増したかたちだ。
また先月(2013年12月)20日には同性婚を禁じるユタ州の州法について、連邦地裁が違憲判決を下した。ユタ州は敬虔なモルモン教徒が多い保守的な土地柄で知られているだけに米メディアは大きなニュースとして取り上げた。
さらに今月(1月)14日には、別の連邦地裁が、オクラホマ州の州憲法修正条項が同性婚を禁じていることについても違憲判決を下しており、同性婚承認の流れは確実に強まっているといえる。
ただしいずれのケースでも州側が判決を不服として連邦高裁に控訴しており、現段階では新たな同性婚の承認は行われていない。同様の裁判は全米各地で行われており、「最終的な判断は最高裁に委ねられる」(米CNNテレビ)とみられている。
これらのケースが最高裁に持ち込まれた場合、どのような判決が出るかは不透明だ。最高裁は昨年(2013年)6月の判決では、連邦政府が州による同性婚の承認に異議を唱えることを否定しただけで、州が同性婚を承認せねばならないと判断したわけではない。最高裁は「結婚制度のあり方は州が決めるべき領域」「結婚に関する法律は州によって違っていい」と繰り返し強調し、同性婚を承認するか否かの判断自体は州に委ねている。
同時に審議された同性婚を禁止するカリフォルニア州憲法の修正条項の合憲性をめぐっても、最高裁は訴えを却下して修正条項を違憲とする原判決を維持しただけで、同性婚を禁じることの合憲性について最高裁としての判断は示さなかった。
また同性婚承認の流れは強まっているものの、米国では現在でも33州では同性婚に法的な制限が加えられ、保守層や高齢者を中心に4割以上の米国民が同性婚を支持していないという現実もある。米ワシントン・ポスト紙は同性婚承認の流れが「全米的なものか地域的なものかは不明だ」としている。
これまでの裁判で同性婚反対派は、結婚を「子供を産み、育てるための環境を整えるための制度」と位置づけ、結婚を異性間に限定することの正当性を主張。また同性婚承認が米国社会に与える影響の大きさは未知数で、慎重に取り扱うべきだとも訴えている。同性婚にはキリスト教的な価値観から反対する声も多い。一方、同性婚支持派は、結婚を出産や子育てと結びつければ、高齢者や不妊のカップルにも結婚は認められないことになるなどと反論。同性婚カップルにも結婚の権利が認められるのは当然だとしている。いずれの主張に対しても、一定の賛同が集まっているのが現状だ。
バラク・オバマ大統領(52)は現職として初めて同性婚支持を表明し、国際社会でもロシアの同性愛宣伝禁止法を強く批判するなどしている。オバマ氏やミシェル夫人(50)、ジョー・バイデン副大統領(71)が、ソチ冬季五輪の開会式などに出席しないことは、抗議の表れとみられている。しかし米国内でも同性婚をめぐる意見の違いは残っており、同性婚の全面承認に向けた道筋はいまだ整っていない。(ワシントン支局 小雲規生(こくも・のりお)/SANKEI EXPRESS)