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年間延べ5000万人参加目標 10円寄付自販機「夢の貯金箱」

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの社会

年間延べ5000万人参加目標 10円寄付自販機「夢の貯金箱」

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 【ソーシャル・イノベーションの現場から】

 飲み物を買うと1本につき10円が寄付される社会貢献自動販売機「夢の貯金箱」。日本財団が2009年から全国的に展開し、昨年(2013年)12月に設置台数が2000台を超えた。この1月10日からは、寄付金の使い道を決める「ゆめちょ総選挙2014」が始まった。

 購入者が使い道選択

 この選挙は「夢の貯金箱」で飲み物を購入した人に、「いじめ」や「災害」など5つの社会課題の中から最も共感するものを1つ選んでもらい、自動販売機に張り出されたポスターに記載されているプロジェクトに投票をしてもらう仕組み。それぞれの社会課題の背景や課題解決のための計画、寄付金の使い道は特設サイトで紹介している。選挙期間は今月(1月)30日までで、得票数の多いプロジェクトに寄付金が活用される。

 夢の貯金箱は、1台当たりの寄付額が年約5万円で、その総額は1億円を超える。延べ1000万人が寄付に参加していることになる。欧米に比べて日本では「寄付文化」がなかなか定着しなかったが、東日本大震災などをきっかけに社会貢献活動への参加手段の一つとして広く認識されるようになってきた。寄付参加者の裾野の広がりとともに、NPOやボランティア団体も、窓口の拡大について試行錯誤を繰り返している。ネットを活用した「クリック募金」やクレジットカードのポイント還元による寄付のほか、最近ではネットを通じてファンド(基金)への出資者を募る「クラウド・ファンディング」など新しい仕組みも登場し、寄付の方法は多岐に広がってきた。

 もちろん新規の寄付参加者を開拓することも重要だが、継続的に寄付をしてもらえるようにすることも課題である。活動報告やイベントへの参加を呼び掛けたり、ボランティアの機会を提供したりと活動への理解を深めてもらうことに工夫を凝らしている。

 寄付する側の意識にも変化が見られる。ただお金を寄付するだけでなく、寄付したNPOの活動に何らかの形で「参加」することを希望する人が増えている。多彩な活動の積み重ねが、日本の寄付文化を着実に発展させている。

 社会貢献の機会提供

 「夢の貯金箱」が総選挙を始めた狙いも、新たな参加の機会を提供することにある。これまでは「飲み物を買った結果、寄付に参加した」という受動的な面が強かった。しかし、総選挙を行うことで、参加者も寄付対象プロジェクトの決定プロセスに関与できる。実際に投票をした人からは、「選挙という仕組みがおもしろい」「自分の一票が反映されることで飲み物を買うモチベーションが高まる」「選挙をきっかけに新しい社会の課題を知ることができた」といった感想が寄せられている。

 さらに参加意識を高める工夫も取り入れた。NPO法人「サービスグラント」と協力し、選挙で選ばれた社会課題の解決のため、「プロボノ」と呼ばれる仕事を通じて身に付けたスキルを生かせるボランティアの派遣制度を導入。「夢の貯金箱」の参加者に「プロボノ」としての活動を呼び掛けるというものだ。東京と大阪でプロボノについての説明会も順次、開催している。

 サービスグラントの嵯峨生馬代表理事は「プロボノは受益者となるNPOはもちろん、参加者にとっても実りの多い活動。一人でも多くの人に参加してもらいたい」と呼び掛けている。

 社会貢献に気軽に参加できる入り口として注目されている寄付を備えた自動販売機は今後も台数、種類ともに増え続けると予想される。そうした中で、夢の貯金箱は「参加」という切り口で差別化を図り、今後3年間で設置台数を1万台に増やし、年間で延べ5000万人が社会貢献に参加することを目指していく。(日本財団・ファンドレイジングチーム 沢渡一登/SANKEI EXPRESS

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