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教育勅語について 鈴木日宣

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教育勅語について 鈴木日宣

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 【尼さんの徒然説法】

 お日様が昇ってくることが待ち遠しい季節となりました。早朝、真っ白に霜の降りた景色は冷たく、そして少しばかり寂しく感じるものですが、お日様の光がほんの少しあたるだけで、きらきらと、それはそれは美しい虹色に輝きはじめるのです。閑(しず)かな冬の朝が目覚めようとする、この美しいひと時が私は大好きです。

 教育の原点

 私の務める寺院の庫裏には金色に縁取られた教育勅語の額がかかっています。師匠はこの額をなぜ掲げているのか、次のようにお話しして下さいました。「戦後、修身や教育勅語がGHQによって排除されたことで日本人の精神は崩壊してしまった。教育を根本から変えていかなければ日本の将来は目に見えている。良いものは時代を経ても良いのだ。教育勅語は教育の原点とすべきものである」と。

 教育勅語には「皇室の祖先は日本建国以来、長い歴史の中で深く厚い徳を築き、また国民は世々、心を一つにして忠義と孝行を尽くし、今日に至るまで立派な行いをしてきた。

 それは日本という国柄の優れた特色であり、教育の根源もそこにある。国民は十二の徳目を実践することが大切であり、それは祖先が遺(のこ)した美風である。昔も今も変わらぬ誤りのない道であり、世界にも通じる正しい道徳であるから、徳を身につけ人格を磨くように私(明治天皇)とともに努力していきましょう」ということが書かれています。

 その十二徳目とは何でしょうか。(1)孝行…親に孝養を尽くし祖父母や先祖を大切にする(=仏教でいう父母の恩に報いる)(2)友愛…兄弟姉妹は仲良くする(3)夫婦の和…夫婦は仲むつまじくする(=子供の精神状態の安定)(4)朋友の信…友達はお互い信じ合う(=いじめの減少)(5)謙遜…自分の言動を慎む(6)博愛…すべての人に広く愛の手を差し伸べる(=世界平和に繋(つな)がる)(7)修学習業…勉学に励み、職業を身につける(=引きこもりの減少)(8)知能啓発…知徳を養い才能を伸ばす(9)徳器成就…人格の向上につとめる(10)公益世務…広く世の人々や社会のためになる仕事に励む(=社会貢献)(11)遵法(じゅんぼう)…法律や規則を守り、社会の秩序に従う(=犯罪の減少)(12)義勇…国難などの危急の事態の時は正しい勇気をもって国のために真心を尽くす。

 仏教の報恩感謝の精神にも通ずる大切で尊い事柄ばかりです。

 高い倫理観で

 戦後焦土と化し、何もかも失い、明日食べる物さえ無いような逼迫(ひっぱく)した生活の中、日本が奇跡ともいえる復興を成し遂げることができたのは、教育勅語により高い倫理観を持った方々が親、兄弟、友を思い、そして国の将来を思い、身を削って復興に努力してくださったおかげであり、その恩恵に与(あずか)って私たちは今を生きているのです。感謝を忘れてはなりません。

 2015(平成27)年度にも道徳の授業を教科化するという文部科学省の方針を、実に喜ばしく思います。戦前の日本には「恥の文化」がありました。弱い者をいじめたり、国益を損なうようなことをするのは恥ずかしいという教育。その中から強く美しい精神が生まれました。

 教育勅語を道徳の教科化のたたき台とすることにより、精神的な豊かさを持つ日本を築くことができるのではないでしょうか。

 ≪自国の学問、道徳教科を守るため≫

 1890(明治23)年に発布された教育勅語はどのような背景から作られたものなのでしょうか。

 約300年間続いた江戸時代が終わり、明治時代になると、日本には次々と新しい西洋文化が取り入れられました。教育もまた例外ではありませんでした。当初は広く知識を得、身を修め才能や技術を伸ばし、身を立てることを目標とする実用的な教育でした。しかし、西洋文化をまねることを急ぎすぎ、自国の学問、特に道徳教科が軽視されるという事態を招いたのでした。そのような教育の在り方を憂慮された明治天皇は新しい教育方針について、すべての国民が心がけ実践すべき徳目をあげ発布されたのが「教育に関する勅語」(教育勅語)です。

 国民に一方的に「~しなさい」と書かれてはおらず、明治天皇御自ら「私も国民と共に」と仰せられています。今上天皇、そして昭和天皇が常に国民に御心を寄り添われてこられたことを鑑みますと明治天皇をはじめ歴代の天皇方も御同様に国民を深く想われてこられたのだと、私は深い感動を覚えます。「教育勅語=軍国主義・封建主義」と直結して考える人がいますが、決してそのようなために作られたものではありません。祖先のおかげで現在があることに感謝され、日本の将来を深くお考えになり、人格の向上のためにと作られたのです。ぜひ一読して下さい。素直な目と心で読むならば、その素晴らしさがよくわかるはずです。(尼僧 鈴木日宣/撮影:瀧誠四郎/SANKEI EXPRESS

 ■すずき・にっせん 1961(昭和36)年6月、東京都板橋区生まれ。音楽が好きで中学では吹奏楽部に入りクラリネットを担当。高校生の時、豊島区吹奏楽団に入団。音楽仲間とともに青春時代を過ごす。

 7年間社会人を経験したあと内田日正氏を師として26歳で出家。日蓮宗系の尼僧となる。現在は千葉県にある寺院に在住し、人間界と自然界の間に身をおきながら修行中。

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