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現実をずらして見ると、すごくおもしろい 「ノベライズ・テレビジョン」天久聖一さん
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パロディーが大好きという天久聖一(あまひさ・まさかず)さん。「ものの見方を1つ覚えれば、次からは自分で妄想して楽しめる」と話す(塩塚夢撮影)
「笑っていいとも!」「徹子の部屋」「笑点」…あのテレビ番組がまさかの“ノベライズ”!? マンガから映像制作まで、幅広いジャンルで活躍する鬼才・天久聖一さん(45)。今年9月に初小説を刊行したばかりだが、早くも第2作『ノベライズ・テレビジョン』を刊行した。テレビのバラエティー番組やCM、ヒット曲をパロディー化した短編集。読めばもっとテレビが楽しくなる…かも。
「自分自身でも、まさか出版されるとは…と驚いています」と苦笑するが、それもそのはず。お友達紹介コーナーでタモリを襲った動揺、黒柳徹子の秘めた恋、笑点メンバーが背負うそれぞれの葛藤と笑いへの熱い思い…。テレビの“顔”たちをめぐる明暗さまざまのドラマを、勝手に妄想しまくった。「新しいものは共有しにくい。自然と、誰もが知っているモチーフばかりが集まりました。長く続いている番組は様式美が確立しているので、イジりがいがありましたね」
全32本と盛りだくさんだが、バラエティーは実に豊か。笑いあり、人情ものあり。「新婚さんいらっしゃい!」がハリウッド顔負けのアクション作品になったりする。「いろんなジャンルがありますが、共通しているのは『読後感のよさ』。オリジナルがあるものですので、あまり皮肉っぽくなりすぎないように心がけました」
ベタな展開なはずなのに、モチーフそのものの存在感によって、妙に斬新に映る。「文体も展開も、どこかで読んだことがあるものにあえてしています。モチーフもパロディーなら、文体もパロディー。全くオリジナリティーがないわけですが(笑)、2つを掛け合わせると、予想もつかないパワーを発揮する。いわばリミックスをする楽しさがありました」
雑誌『週刊SPA!』の人気連載「バカはサイレンで泣く」など、長年雑誌の投稿コーナーを担当してきた。「人が作ったネタでメシを食ってきたので、たまには自分でネタをと…。プレッシャーでしたが、やるからにはグレードの高いものを作りたかった。納得のいく内容に仕上がったと思っています」
妄想ながらも、不思議なリアリティーのあるエピソードを作り上げた。「作品を書くに当たって、いろいろ調べましたので、すごく登場人物には思い入れがあります。(作品に登場する)ジャパネットたかたの社長の出身地をグーグルのストリートビューで調べたり…。自分の中では、もはやこっちの方がホンモノなんです(笑)」
徹底してパロディーにこだわる。「虚構と現実のボーダーが好きなんです。ちょっとずらして現実を見ると、すごくおもしろい。世界の見方を1つ覚えるだけで、次からは自分自身で妄想して楽しめる。(テレビを)見て、(今回の作品を)読んで、また見て…。何度も楽しめるはず。そういう意味では、コストパフォーマンスがいい本だと思います」(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS)
「ノベライズ・テレビジョン」(天久聖一著/河出書房新社、1260円)