SankeiBiz for mobile

アベノミクス外交で対中牽制 首相、ASEAN5カ国首脳らと会談 円借款積極表明

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの政治

アベノミクス外交で対中牽制 首相、ASEAN5カ国首脳らと会談 円借款積極表明

更新

ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟10カ国  安倍晋三首相(59)は12月15日、官邸で東南アジア諸国連合(ASEAN)の5カ国の首脳らと相次いで個別に会談した。各国との関係強化を確認したのを受け、経済成長戦略の柱であるインフラ整備などへの資金協力を積極的に表明。安全保障面での連携も強め、ASEAN諸国に影響力を持つ中国に対抗したい考えだ。(12月)13日から始まった日本とASEAN加盟10カ国との特別首脳会議は、個別会談を含む全日程を終え閉幕した。

 10カ国と投資協定

 安倍首相は、ミャンマーのテイン・セイン大統領(68)との会談で、鉄道網改修やヤンゴン近郊の経済特区のインフラ整備を中心にした総額632億円の円借款供与を表明。保健・医療分野での協力強化に取り組む姿勢も明確にしたうえで、「大統領との連携を密にし、地域の発展のために大きな成果を挙げていきたい」と強調した。

 日本はすでに900億円超の円借款や無償資金協力をミャンマーに行う方針を表明しており、安倍政権での資金協力は1500億円を突破する。

 また、両国間の投資協定の署名も行われた。協定には、ミャンマーに進出する日本企業に現地企業と同様の投資環境を保障したり、行政手続きの透明性を向上させたりすることなどが含まれる。これで日本はASEANの10カ国すべてと投資協定を締結した。

 防空圏などで連携

 各国首脳との会談を通じ、中国への牽制(けんせい)も強く打ち出した。

 ミャンマーに加え、ラオス、ベトナムとの首脳会談でも首相は「中国による東シナ海上空の防空識別圏設定は、南シナ海での動きと同様、力を背景に現状を一方的に変更する試みで、受け入れられない」と繰り返し、共感を求めた。

 ベトナムのグエン・タン・ズン首相(64)との会談では、中国による東シナ海上空の防空識別圏設定や南シナ海への海洋進出を踏まえ、海洋安全確保や航空秩序維持に連携して取り組む方針を確認。ベトナムの沿岸警備力向上のための巡視船供与について協議を始めることで一致した。安倍首相は、高速道路網の整備などへの計約960億円の円借款供与も表明し、会談後の共同記者発表で「日本とベトナムの連携は地域の安定に極めて重要だ」と語った。

 尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐる中国との対立が解ける見通しは立たず越年は必至。当面はASEAN諸国との関係強化で中国に圧力を加える戦略だ。

 また、カンボジアのフン・セン首相(62)とは、病院整備などで180億円の円借款とアンコールワットなど遺跡修復支援向けの約9000万円を含む約32億円の無償資金協力を確認。ラオスのトンシン・タンマヴォン首相(69)との会談でも円借款など計約100億円の支援で合意し、外務、防衛当局間の安保対話の枠組み創設でも一致した。

 タイのニワットタムロン副首相兼商業相とも会談し、安倍首相は平和裏に反政府デモが収束することへの期待を示し、在留邦人の安全確保を求めた。

 ≪「悪意の中傷に強烈不満」 中国、安倍首相を非難≫

 中国外務省の洪磊(こう・らい)副報道局長は12月15日までに、日本とASEAN加盟10カ国との特別首脳会議で安倍晋三首相が中国による防空識別圏設定などを批判したことについて、「国際的な場所を利用し、中国を悪意で中傷した言論に強烈な不満を表明する」と非難する談話を発表した。

 中国への対抗姿勢を鮮明にしている安倍首相への中国指導部のいら立ちを反映した形。同時に、ASEANに対しては安倍首相に同調して「中国包囲網」に加わらないようくぎを刺す狙いもありそうだ。

 談話は、尖閣諸島の領有権を主張。中国が設定した防空圏については「飛行の自由に影響を与えない」として「国際世論を間違った方向に導こうとする日本のたくらみは必ず失敗する」と主張した。

 安倍首相は14日、特別首脳会議後の記者会見で「一方的な行為により東シナ海、南シナ海の現状を変えようとする動きが見られる」「中国に対し飛行の自由を妨げるような一切の措置を撤回するよう求める」などと中国を批判していた。(共同/SANKEI EXPRESS

ランキング