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オバマ米大統領 アジア歴訪中止 主役不在 TPP年内妥結遠のく
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米ホワイトハウスは10月3日、バラク・オバマ大統領(52)が6日から予定していたインドネシアとブルネイ歴訪を中止すると発表した。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)首脳会合も欠席する。米政府機関の一部閉鎖の長期化が危ぶまれる中、正常化に向けて対応に専念する必要があると判断した。
TPP首脳会合はオバマ氏が議長役を務める予定だったこともあり、年内妥結を目標とする交渉への影響が懸念される。
甘利明(あまり・あきら)TPP担当相は4日、オバマ大統領から8日のTPP首脳会合を予定通り開催してほしいとの意向が各国に伝えられたと、記者団に明らかにした。
オバマ氏は10日以降に予定していたマレーシアとフィリピン訪問の中止を決定済み。6~12日に計画していた東南アジア4カ国歴訪は全て中止となった。オバマ政権が掲げるアジア重視政策への打撃となるのは避けられない。
インドネシアではTPP会合とアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が、ブルネイでは東南アジア諸国連合(ASEAN)の関連会議や東アジアサミットが予定されている。ホワイトハウスは「政府機関閉鎖に直面し外国を訪問することは難しいと判断した」との声明を出した。
米議会が民主、共和両党の対立で、2014会計年度暫定予算を可決できず、新年度の今月(10月)1日から政府機関の一部が閉鎖。今月半ばには、議会による連邦債務上限の引き上げ期限も迫っており、引き上げに失敗すれば世界経済に甚大な打撃を与える可能性がある。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪主役不在 TPP年内妥結遠のく≫
TPP交渉を主導してきたオバマ米大統領が「重要な節目」と位置付けていた首脳会合の欠席を決めた。米政府機関の閉鎖に解決の糸口が見いだせず、内政への専念を迫られた。推進の要を欠いたTPP協議は失速が免れず、目標だった年内の交渉妥結は遠のいた。
「残念な知らせがある。オバマ大統領がバリに来られなくなった」。インドネシアのバリ島で10月4日開かれたTPP閣僚会合の席上、議長役を務めるフロマン米通商代表の説明に、各国の閣僚らは驚きの表情を浮かべた。
メキシコのグアハルド経済相は、記者団に対し「オバマ氏の欠席は交渉のスピードに影響を与えない。首脳からの指示を受け作業を続けている」と語ったが面持ちは硬いまま。ある国の閣僚は「年内妥結だというから来ているのに」と不機嫌さを隠しきれない様子だった。
米国は来年秋に中間選挙を控え、年明けから選挙戦が本格化する。年内のTPP交渉妥結にこだわるオバマ政権は、行き詰まる協議の打開に躍起だった。
関係筋によると、米国は交渉の席上、自国の利益につながる主張を押し通そうとする場面が目立ち、利害が対立する新興国の反発を買っていた。「米国は焦っている」。参加国の見方は一致していた。
オバマ政権がTPPを通商政策の最重要課題と位置付けるのは、野党共和党が支配する議会下院との対立が激しく、予算執行が絡む新たな政策が何一つ実行できないためだ。通商政策は野党と協調路線が築ける数少ない分野だけに、TPPを突破口に経済運営を切り回したい思惑は強い。
側近のフロマン氏に外堀を埋めさせた上で、10月の首脳会合に自らが乗り込み年内妥結へ道筋をつける-。オバマ氏の描いたシナリオだったが、ここでも国内の政治対立に阻まれた。
オバマ氏欠席が発表される数時間前、米紙とのインタビューに応じたフロマン氏は、年内の交渉妥結は「野心的だが可能だ」と従来の見解を繰り返した。ただ、通商交渉に詳しい米関係者は「議会との対立が解けない政権を相手に、他国がどこまで真剣に協議に応じてくれるか疑問だ」と交渉の勢い低下は否めないと指摘した。
「日米でTPP交渉をリードする」と意気込んでバリ島に乗り込んだ甘利明(あまり・あきら)担当相。オバマ氏の欠席に「何とか都合をつけてもらえるのではないかと期待していたが」と言葉少なだった。
3日開幕した閣僚会合は年内の交渉妥結に向けて交渉を加速させることを再確認した。しかし、ある経済官庁の幹部は「年内妥結へ他国の尻をたたいていた米国はオバマ大統領の欠席で信頼を失う。まとまりそうだった話もまとまらなくなる」と気をもむ。
菅義偉(すが・よしひで)官房長官は4日の記者会見で「各国の閣僚は引き続き協力していくことで合意した」と発言。首脳会合は予定通り8日に開かれる方向で調整が進んでおり、安倍晋三首相が出席すると明らかにした。
ただ「主役のオバマ氏不在の首脳会合で決まったことが、どれだけの重みを持つのか」(経済団体の担当者)との疑問は残る。年内に12カ国の首脳が集まる最後の機会を逃した代償は高くつきそうだ。(ヌサドゥア 共同/SANKEI EXPRESS)
・米政府機関の閉鎖のため、バラク・オバマ大統領のインドネシア、ブルネイ歴訪は中止
・大統領は政府機関閉鎖の中での外遊は困難だとの判断と、即時に政府再開のための投票をすべきだと共和党に訴える意味から中止を決定
・ジョン・ケリー国務長官が大統領に代わり両国への米国代表団を率いる
・今回の外遊中止は下院共和党による政府機関閉鎖の結果でもある
・閉鎖は米国の輸出振興による雇用創出や世界最大の新興経済地域(アジア)での米国の指導力と国益にとって打撃