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特定秘密保護法案 衆院を通過 「決める政治」会期内成立へ 維新と協調に自信

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特定秘密保護法案 衆院を通過 「決める政治」会期内成立へ 維新と協調に自信

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衆院本会議で特定秘密保護法案が与党とみんなの党などの賛成多数で可決。拍手をする安倍晋三(しんぞう)首相(右)ら=2013年11月26日午後、国会・衆院本会議場(宮崎裕士撮影)  衆院は11月26日夜の本会議で、機密を漏洩(ろうえい)した公務員らへの罰則を強める特定秘密保護法案の採決を行った。法案は与党とみんなの党の賛成多数で可決、与党は27日の参院本会議で趣旨説明を行い、参院で審議入りさせる予定。法案は参院審議を経て12月6日までの会期内に成立する見通しとなり、政府・与党は今臨時国会の会期を延長しない方針だ。

 与党とみんなとの法案修正で合意した日本(にっぽん)維新の会は、本会議に先立つ衆院国家安全保障特別委員会で「与党が強引に採決に踏み切った」として採決時に退席。本会議も棄権した。民主党などは反対した。

 与党は26日午前の特別委理事会で、26日に安倍晋三首相(59)が出席して質疑を行った後、ただちに採決する日程を提案。民主、維新が反対したまま質疑に入り、質疑後に採決動議を提出、採決した。みんなを除く野党各党は本会議採決に反対したが、与党は法案の緊急上程と採決を決めた。

 法案は、外交や防衛、テロ活動防止など安全保障に関わる情報を閣僚らが特定秘密に指定し、漏らした公務員らに最高で懲役10年を科す内容。政府は、年内に始動する国家安全保障会議(日本版NSC)の運営に秘密保全態勢の確立は欠かせないとしていた。

 首相は26日、本会議前に国会内で行われた会合で「法案を通すことで日本版NSCがしっかり機能し、日本の安全はより守られていく」と述べ、法案の意義を強調した。

 ≪「決める政治」会期内成立へ 維新と協調に自信≫

 安倍晋三首相は、特定秘密保護法案で多数の合意形成を目指してきたが、採決では「26日の衆院通過」を優先した。審議時間は45時間超。日程をさらに遅らせると会期延長含みとなり、年末の政治日程に影響しかねない-。首相は「決める政治」への意識が働いた。日本(にっぽん)維新の会は欠席に回ったが、官邸サイドは関係は維持できると自信をみせる。政権への接近を強めるみんなの党とてんびんにかけながら政権運営を行う。

 「日程は変えませんから。延長したら参院での審議が緩んじゃいますよ…」

 維新の中田宏国対委員長代理(49)と連日、電話で連絡を取り合っていた菅義偉(すが・よしひで)官房長官(64)は、11月25、26両日にわたり中田氏にそう通告した。

 維新は政府・与党に「28日の衆院通過なら採決を認める」とのサインを水面下で送っていたが、首相らが2日間の遅れさえ認めなかったのはなぜか。

 26日の衆院通過をずらせば12月6日までの会期の延長は避けられない。しかし政府・与党は、同日の政調全体会議で2014年度予算編成の基本方針原案を審議し、12月12日に2014度税制改正大綱、12月24日に概算要求基準を決定する日程をそれぞれ組んでいる。12月13~15日には、首相が12月の行事で最も重視する東南アジア諸国連合(ASEAN)との特別首脳会議が東京で開かれる。

 みんなの党の賛同が得られていたのも大きい。維新は最終的には欠席したが、官邸側は維新とみんなに対し政権への「接近争い」を促すことで、野党を総崩れさせることを学んだ。菅氏-松井一郎維新幹事長(大阪府知事)のパイプも引き続き健在だ。

 維新側も安倍政権を敵に回すことは考えていない。採決での欠席は、修正合意に反発する議員に配慮した側面が強い。石原慎太郎共同代表も水面下で藤井孝男国会議員団総務会長に「法案は内容的には良い。賛成したらどうなんだ」と促していた。松井氏は26日、府庁で記者団に「与党には与党の事情があるんでしょう」と理解を示し、欠席戦術についてもこう言い切った。

 「反対ではないという意思表示だ」(坂井広志、酒井充/SANKEI EXPRESS

 ≪首相「第三者機関設置は必要」≫

 特定秘密保護法案をめぐり、安倍晋三首相は11月26日の衆院国家安全保障特別委員会で、特定秘密の指定や解除の運用状況をチェックする第三者機関について「私は設置すべきだと考えている」と前向きな意向を表明した。第三者機関設置は日本(にっぽん)維新の会が強く求め、首相も応じた形だが、特定秘密をどこまで開示するかなどの制度設計は未定のまま法案は採決された。

 与党は維新との修正協議で第三者機関の設置に難色を示し、修正案では付則での「設置検討」にとどめていた。だが26日、確約を迫った維新の山田宏衆院議員に対し、首相は「設置すべきだ」と表明。官邸側の事前の打ち合わせでは想定していなかった答弁だった。

 そもそも第三者機関の扱いは政府原案に明記されず、野党との修正協議の過程で急浮上した。首相は法成立後、内閣官房に第三者機関設置に向けた「準備室」を設け、そこで具体的な検討に着手することも明らかにしたが、準備不足は否めない。

 実際に設置した場合、特定秘密を知る立場になる人物の選定基準や適性評価の実施、特定秘密の開示の是非などの課題があり、運用面に不安を残している。(SANKEI EXPRESS

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