SankeiBiz for mobile

安倍首相 3つの「顔」で政策語る 各党代表質問終了

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの政治

安倍首相 3つの「顔」で政策語る 各党代表質問終了

更新

 安倍晋三首相(59)は10月18日、所信表明演説に対する3日間の各党代表質問を終えた。答弁を通じた首相の「表情」からは、優先度に応じて政策課題を3分類していることが読み取れた。中でも、首相の代名詞ともなった「アベノミクス」による経済再生について野党の批判には批判で返す強い姿勢をみせた。舞台は21日から衆院予算委員会に移り、産業競争力強化法案や国家安全保障会議(日本版NSC)創設関連法案、機密を漏らした公務員らへの罰則を強める特定秘密保護法案などの論議が本格化するが、首相は3つの「表情」をみせるのか。(峯匡孝/SANKEI EXPRESS

 ≪憲法改正は「淡々」と答弁≫

 首相にとってライフワークといえる憲法改正や集団的自衛権の行使容認という課題に対し、意外にも「淡々」とした答弁を繰り返している。

 「憲法改正は今後、国民の中で議論がさらに深まることが何よりも大切だ」

 「集団的自衛権については有識者会議でわが国の平和と安全を維持するため、検討している。政府としてはこの議論を待ちたい」

 資料に目を落としたまま答弁する姿も目立ち、官僚答弁丸出しともいえる。

 首相にとって2つの課題は中期的であり、今国会の焦点にしたくない思いがある。政府高官も「集団的自衛権はいま議論しているところだから、あまり力が入っていない。通常国会で具体的に語るのだろう」と解説する。

 だが実際は、これらに批判的な公明党への配慮が「踏み込み不足」の最大の理由となっているようだ。

 ≪「お願い」徹するNSC≫

 今国会での成立を目指すNSC創設関連法案や特定秘密保護法案には、「お願い」に徹してきた。

 各省庁の機密情報を一元化するNSCには、各国の情報当局から得られた高度な機密を集約する。漏洩(ろうえい)防止の法整備として特定秘密保護法案の成立は不可欠だが、野党側は「知る権利」の観点から批判的な質問を浴びせてきた。これに対し、首相は低姿勢で必要性や意義を強調している。

 「外国との情報共有は各国での情報保全が前提だ。法整備は喫緊の課題であり、『知る権利』の配慮も認識している。早急に国会提出できるよう努める」

 「NSCは質の高い情報で首相を中心とした議論を行い、わが国の外交・安全保障政策の司令塔となる」

 野党を意識した説明ぶりが目立ち、「大事な法案だからこそ、あわてず丁寧な姿勢でお願いしている」(首相周辺)という。

 ≪経済再生批判に「怒り」≫

 首相は、昨年末の就任後、経済再生を政権の最重要課題に掲げてきた。これを批判した野党には「怒り」をもって制した。

 野党側は雇用規制緩和を「解雇特区」と名付け、復興特別法人税の1年前倒し廃止方針を「大企業奉仕の政治」と皮肉った。

 首相は「『解雇特区』といったレッテル貼りは事実誤認で、不適切だ!」と述べ、質問した野党議員をにらむように反論した。

 民主党の海江田万里(かいえだ・ばんり)代表(64)にはこんなトドメを。

 「連合の集計では、ベースアップを行う企業が5年ぶりに2ケタになった」

 首相は賃金上昇のデータを自信たっぷりの表情で紹介した。連合は民主党最大の支持団体。海江田氏には恥辱だったに違いない。野党の批判が高じれば、アベノミクス効果が失速しかねないとの懸念があり、早期に芽を摘みたい首相の本音がみえてくるようだった。

 ≪慰安婦問題「非常に心が痛む」≫

 安倍首相は10月18日の参院本会議で、政府による聞き取り調査のずさんさが明らかになった慰安婦問題に関し「筆舌に尽くしがたいつらい思いをされた方々を思うと、非常に心が痛む。私の思いは歴代首相と変わらない」と改めて述べた。同時に「この問題を政治問題、外交問題化させるべきではない」とも指摘した。

 また「これまでの歴史の中では多くの戦争があり、女性の人権が侵害されてきた」と述べた上で、人権侵害のない21世紀に向けて政府として全力を尽くすと表明した。

 1995(平成7)年の「村山富市首相談話」が認めた過去の植民地支配と侵略に関しては「わが国はかつて多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に多大な損害と苦痛を与えた。その認識は安倍内閣も同じだ」と述べた。

 公明党の山口那津男(なつお)代表(61)の質問に対する答弁。(SANKEI EXPRESS

ランキング