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漏洩に厳罰 「知る権利」侵害懸念 特定秘密保護法案、きょう閣議決定

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漏洩に厳罰 「知る権利」侵害懸念 特定秘密保護法案、きょう閣議決定

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 政府は、国家機密を漏らした国家公務員らへの罰則強化を盛り込んだ「特定秘密保護法案」を10月25日閣議決定し、国会に提出する。今国会での成立を目指す。法案の最大の狙いは、年内発足を目指す国家安全保障会議(日本版NSC)創設に伴い高度な機密の漏洩(ろうえい)防止を強化することにある。政府は諸外国の情報機関との情報共有のためにも不可欠と判断した。

 最高懲役10年

 「特定秘密」は、(1)防衛(2)外交(3)特定有害活動(スパイなど)防止(4)テロ活動防止-の4分野の情報について、閣僚ら各省庁のトップが「漏洩すると国の安全保障に著しく支障を与える恐れがある」と判断した情報を指定する。

 焦点となっているのが特定秘密の範囲だ。法案を担当する森雅子担当相は24日の参院予算委員会で「(特定秘密は)本当にわずかな安全保障に関わるものだ」と強調し、「指定の乱発」はないとの認識を示した。

 ただ、政策判断ミスといった都合の悪い情報を特定秘密に指定するなど、時々の政権によって恣意(しい)的に運用される可能性は否定できない。政府は秘密指定と解除に関する統一基準を作る方針だが、詳細は未定だ。

 指定の有効期間は上限5年で、更新が可能。計30年を超えた更新は内閣の承認を必要とし、乱用防止の担保とする考えだ。安倍晋三首相も24日の参院予算委で「政権交代で新しい閣僚が誕生すれば、改めて指定状況の適否を判断する」と述べ、一定の透明性は確保できるとの認識を示した。

 漏洩させた公務員らへの罰則は最高で懲役10年を科す。国家公務員法(懲役1年以下)と比べ大幅な厳罰化となる。一方、特定秘密を取得した側も最高で懲役10年が科せられる。

 取得した側の処罰に関し公明党などが懸念を示したため、政府は「知る権利」や「報道の自由」への配慮を明記した。取材行為についても「法令違反や著しく不当な方法と認められない限り正当な業務として罰しない」としたが、適用は運用次第の面も残っている。

 世論反発の過去

 諸外国に比べて日本の秘密保護に関する法整備が遅れているのは、国民の「知る権利」の侵害を懸念する世論の反発が強かったためだ。

 1985年に当時の中曽根康弘政権が自衛隊スパイ事件に対応し、特定秘密保護法案と同じ「国家秘密法案(スパイ防止法案)」を国会に提出した。「日本はスパイ天国」(中曽根氏)との汚名返上を狙ったものの、「知る権利」の観点から反発が噴出、廃案になった。

 近年では2010年9月、尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖で起きた海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件の映像が動画サイトに流出。当時の民主党政権の仙谷由人(せんごく・よしと)官房長官は「捜査書類を流出させたのは明らかな犯罪だ」とし、情報保全検討委員会を発足させた。

 だが、中国人船長が釈放されるなど政府の不可解な動きに加え、このときも「知る権利」を守るため映像を公表すべきだとの声が続出。政権不信も重なり、情報保護の法制化は実現しなかった。

 「秘密厳守は大前提」

 安倍首相は、安全保障政策の司令塔となる日本版NSCを機能させるためにも、「秘密厳守は大前提。どうしても必要だ」と強調する。日本独自の情報収集は限界があり、米国などからの情報が欠かせない。防衛省幹部は「機密情報をもらう側の“防犯対策”がしっかりしていないと、信頼してもらえない」と指摘する。

 ただ、「知る権利」が確保されるのかとの不安感はなお拭えず、みんなの党の小野次郎氏は24日の参院予算委員会で、衝突事件の映像を流出させた海保保安官を取り上げ「こういう人をどう保護するのか」と、懸念を示した。(SANKEI EXPRESS

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