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明治、粉ミルクの中国販売を休止 商習慣、反日感情 中国ビジネス厚い壁

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明治、粉ミルクの中国販売を休止 商習慣、反日感情 中国ビジネス厚い壁

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 明治ホールディングス傘下で食品事業を展開する明治は10月24日、中国での粉ミルク販売を一時休止することを明らかにした。2010年の口蹄(こうてい)疫、11年の東京電力福島第1原発事故を受け、中国で日本産粉ミルクの輸入禁止措置が長期化したため。

 明治は、オーストラリアの他メーカーに生産委託して中国市場へ製品を供給していたが、コスト増に加え、競争の激化もあり販売が低迷。売り上げは禁輸前の09年比で約3分の1まで落ち込んでいるという。

 明治は「禁輸解除も含め、市場環境に変化があれば事業を再開したい」(広報)としているが、状況は厳しい。

 明治は1993年に中国の粉ミルク市場に参入し、日本製品の輸入販売を始めた。今後、現地で生産する牛乳やヨーグルトなどを販売する予定。子会社による菓子やアイスクリームなどの販売は続ける。

 ≪商習慣、反日感情 中国ビジネス厚い壁≫

 明治ホールディングス(HD)が粉ミルク販売の休止を決めた中国事業は、各業界の大手企業も苦戦を強いられている。右肩上がりの経済成長に加え、約13億の人口を抱える有望市場だが、根強い反日感情に加え、独特の商習慣なども影響。見込み通りの果実を受け取ることが困難になっている。

 省が違えば異国

 「中国マーケットは世界中の企業がしのぎを削る最大の競争市場」。中国ビジネスに詳しい西村あさひ法律事務所の野村高志弁護士はこう強調する。生き馬の目を抜く環境の中では、わずかなつまずきが命取り。日本産粉ミルクの輸入禁止に泣いた明治HDも「ビジネスの前提が変わってしまった」と嘆く。

 自動車市場も、BMWやアウディといったドイツ勢の低価格攻勢が、ただでさえ欧米志向の強い中国人の需要を取り込み、日本車離れを起こしている。「環境に目が向き、燃費の良い日本車が注目されるような変化が起きない限り、日本勢が優位にならない」。証券アナリストからは悲観的な声が上がる。

 独特の商習慣も日本企業の進出をはばむ。ヤマダ電機は今年、販売不振を理由に5月に南京、6月に天津の店を相次いで閉店した。最大の理由は、「省が違えば隣の国に行くくらい異なる」という中国で、全国的な物流システムを構築できなかったためだ。ヤマダ電機は今後、唯一営業を続けている瀋陽店を中心に遼寧省内での物流システム構築に取り組むとする。

 拠点移管もリスク

 反日感情も根強い。日本貿易振興機構(ジェトロ)が9月に発表した反日デモ発生後1年の中国ビジネスの実態調査では、中国消費者の7割以上が尖閣諸島(沖縄県石垣市)の問題が日本製品の買い控えにつながっていると回答した。買い控えの理由は「本当は買いたいが愛国心が優先する」が50%を超え、「日本に腹が立つ」も42.2%に上った。

 昨年12月、上海に中国1号店を出店した高島屋は、尖閣問題で、各地で起こった反日デモなどに配慮。「ほとんど開店のPRができなかった」(広報)結果、当初130億円を見込んだ初年度売上高を60億円に引き下げた。2012年度決算で中国事業が初の減収減益となった資生堂も尖閣問題以降、日用品などが店頭から撤去されるなど苦戦した。

 尖閣問題から1年が経過し、「日本製品不買運動などは沈静化してきた」(ジェトロ)。だが百貨店関係者は、韓国が福島第1原発の汚染水漏れを理由に水産物の一部輸入を禁じたことなどをあげ、「根本的な解決策の見えない反日感情はくすぶり続ける」とみる。

 こうした中、生産拠点をコストの安い東南アジア諸国連合(ASEAN)に移管する動きも加速。今年1~6月の日本企業の中国向け直接投資が前年同期比約3割落ち込む一方、ASEAN投資は約2倍に増え、生産拠点の「脱中国」が鮮明化。

 ただ「中国で一度構築した物流網や技術を移管する企業体力のない企業も少なくない」(野村弁護士)。中国での会社精算には当局の税務調査など手続きが煩雑になるケースもあり、隠れた中国リスクとなっている。(SANKEI EXPRESS

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