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日本版NSC法成立 来月4日に発足 縦割り解消 情報一元化で迅速対応

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日本版NSC法成立 来月4日に発足 縦割り解消 情報一元化で迅速対応

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参院本会議に臨む安倍晋三(しんぞう)首相=2013年11月27日午前、国会・参院本会議場(酒巻俊介撮影)  外交・安全保障政策の司令塔となる「国家安全保障会議」(日本版NSC)創設関連法案が11月27日の参院本会議で自民、公明、民主、日本(にっぽん)維新の会、みんなの党などの賛成多数で可決、成立した。法の成立を受け、NSCは来月(12月)4日に、事務局の国家安全保障局(安保局)は来年1月にそれぞれ発足する。

 NSCは、外交・安全保障政策の迅速な意思決定と情報の一元化を図るため、首相と官房長官、外相、防衛相による「4大臣会合」を常設。2週間に1回程度開催し、緊急事態に対応するため、首相が指定した閣僚で構成する「緊急事態大臣会合」も新設する。

 扱う課題は、北朝鮮の核・ミサイル問題や中国との尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐる問題などを想定。当面は年内に策定する国家安全保障戦略と新しい防衛大綱に取り組む。

 安保局は外務、防衛、警察の各省庁出身者ら約60人規模になる。「戦略」「情報」「中国・北朝鮮」など機能・地域別に6部門を置く。

 安保局長に元外務次官の谷内(やち・しょうたろう)正太郎内閣官房参与(69)が就任し、礒崎(いそざき)陽輔首相補佐官(56)が国家安全保障担当の補佐官を務める予定だ。

 ≪縦割り解消 情報一元化で迅速対応≫

 安倍晋三首相(59)が第1次政権時代に取り組み、挫折した日本版NSCの創設が決まった。7年越しの宿願達成だが、日本を取り巻く安全保障環境が刻々と変化する中で、外交・安全保障政策の司令塔はどう機能するのか-。中国が尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定した例を基に検証した。

 中国の防空識別圏設定は端緒をつかむことができたケースだったかもしれない。習近平国家主席側近の軍関係者が2月、国際情報紙の環球時報に「防空識別圏を設けるのは日本人の特権ではない。私たちも設定することができる」と寄稿していたからだ。

 政府はNSC発足前の現在も、そうしたさまざまな情報を日々把握している。だが、1月のアルジェリア邦人人質事件では各省庁が情報を個別に官邸に報告。「断片的な情報に混乱し、対応に手間取った」(政府高官)との苦い教訓があった。

 NSCは、省庁縦割りの仕組みを改め、情報を一元化するのが最大の特長だ。今回のケースを当てはめると、まず1次情報が事務局の国家安全保障局に集約され、「中国・北朝鮮」部門が中心になって米国、英国のNSCなど海外機関の機密に軍事的な知見も加味して分析する。それを基に防空識別圏設定を想定し首相、官房長官、外相、防衛相による「4大臣会合」を機動的に運営。航空自衛隊の対領空侵犯措置や外交ルートを通じた中国政府への抗議など、対処方針を事前に決めておくこともできる。

 中国が防空識別圏を設定した11月23日以降、一部の航空会社は中国側に飛行計画を提出した。中国が「武力による威嚇」をちらつかせる中、安全な運航を優先したためだが、中国の不当な主張に従ったと受け止められかねない事態だった。当初は政府から計画提出「禁止」の明確な指示もなく、国土交通省が業界団体を通じて計画を提出しないよう各社に要請したのは26日になってからだった。

 NSCには、4大臣会合だけでなく、事態に応じて関係閣僚による「緊急事態大臣会合」を新設する。飛行計画をめぐる混乱などは国交相を交えた緊急事態大臣会合を開き、政府の統一した対処策を事前に決めていれば防げた事態だったといえる。

 政府はNSC発足を見据え、準備を進めてきたが、実際に機能するには経験の積み重ねが必要となりそうだ。(峯匡孝/SANKEI EXPRESS

 【「国家安全保障会議」(日本版NSC)創設関連法のポイント】

・首相、官房長官、外相、防衛相の4者会合を常設し、外交・安全保障の基本方針を決定

・事務局として内閣官房に「国家安全保障局」を新設。府省庁官の調整や政策の企画立案、会議の事務処理を担当

・国家安全保障担当の首相補佐官を置き、4者会合などで助言

・各府省庁にNSCへの情報提供義務を課す

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