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憧れのバーに行こう!(下) まるでショー 「舞台」にうっとり
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イスに座るポーズも様になってる東京・六本木のバー「フリーズ」のマスター、サムさん=2013(平成25)年8月10日、東京都港区(3大学合同_有志学生記者撮影)
≪実践編:六本木の「フリーズ」で初オーダー≫
さあいよいよ実践だ。公開インタビューを終え、宮本さんの行きつけのバーに連れて行ってもらえることになった。
東京・六本木にある「フリーズ」。店の中に一歩足を踏み入れた瞬間、ただならぬ雰囲気が漂ってきた。われわれがよく行く居酒屋とは明らかに違う。
店の奥で開店の準備をしていたマスターは、何と外国人だった。でかくていかつくて、握手をするとき、思わずビビってしまった。恐る恐る取材をお願いすると、快諾してくれた。マスターのサムさんは、話してみると、穏やかで優しい人だった。
米国生まれのサムさんが、どうして日本でバーを開くことになったのだろう。母国では、見た目の通り、ボクサーやボディーガードをしていたそうだ。だが、「人と話すことが大好き」というサムさんは、いつしかバーを開きたいと思うようになったという。
人との出会いを求めて、世界中を回り、一番気に入った日本で修業をすることに。居酒屋や料亭で働きながら、接客や料理はもちろん、店を切り盛りするために必要なノウハウを学び、経験を積んだ後、念願のバーを開店した。
日本でバーを開き、アメリカとの大きな違いを感じるようになった。「バーに限らず、日本では初対面の人といきなりフランクに話すようなことはない。でも、アメリカではそんなことは日常茶飯事。日本でも、アメリカのように初対面の人同士がいきなり打ち解けられるようなバーにしたい」と考えた。
「もっとお客さまを楽しませたい」
「もっとリラックスしてもらいたい」
「もっとストレスを発散してほしい」
サムさんは、取材で「もっと」を何度も繰り返した。お客さんのことをどれだけ大切に思っているかが伝わってきた。
「目の前のお客さんが、どんな気持ちでお店にきたのかを察して話をしたり、ときにはあえて話しかけなかったりと、お客さん一人一人に合った対応を心掛けている」と、サムさんは言う。
インタビューを終え、写真撮影をお願いすると、さっそうとイスに腰をかけ、ポーズをとってくれた。「そのポーズがいかにも様になる」と、笑う宮本さん。2人の雰囲気からもいかに、この店がお客さんから愛されているかがわかる。
「せっかくだから一杯飲んでいきなよ」と、宮本さんにごちそうしてもらうことに。
生まれて初めてのバーでのオーダー。メニューを見ても、どんなお酒なのか全く想像できない。何度も目を往復させ、多少はお酒に詳しい仲間に相談し、やっとオーダーを決める。
初めて目の当たりにしたカクテル作りは、まさにバーカウンターという舞台で行われるショーだった。何種類ものお酒がシルバーの容器(「シェーカー」と呼ぶことは後になって知った)に吸い込まれるように注がれる。容器に氷を入れ、おもむろに振り始めた。
数秒の間、その姿に見とれていると、いつの間にかカクテルグラスがカウンターに用意されていた。そこに注がれた液体は、エメラルドグリーンに輝き、鼻孔を刺激する爽快なミントの香り。グラスに口をつけ傾けると、まろやかな口当たりで今まで経験したことのない味わいが口いっぱいに広がった。
こんなにおいしいお酒は飲んだことがない。昆虫の「バッタ」を意味する「グラスホッパー」と名付けられたこのカクテルを一生忘れることはないだろう。(今週のリポーター:3大学合同 有志学生記者/SANKEI EXPRESS)
初めてのバーで初めてのカクテルのおいしさに感動していると、バーテンダーがいろいろなお酒のことを教えてくれた。バーテンダーと話をしていると、世界が広がっていくように感じた。学生なんかがいったら店に迷惑ではないだろうかと勝手に思っていたが、むしろ学生だからこそ色々なことを教えてくれたのかもしれない。
お酒を飲むなら、安い居酒屋でもいいのではないかと思うかもしれない。でも、居酒屋では他のお客さんと話をしたり、知り合ったりすることはできない。それが、バーと居酒屋の一番の違いかもしれない。学生にとって、バーに行くことは社会人の先輩たちと話をするチャンスでもある。
バーには常連客が多く、集まる客層もさまざまで、特定の趣味をもった人たちが集まるバーもあるという。話をしなくても、格好いい大人の立ち居振る舞いを観察して学ぶこともできる。学生(もちろん成人)にとって、バーに行くメリットは十分にある。むしろ、これから社会人になる上で、アドバンテージになるのではないだろうか。自己投資という意味でも、バーに行くべきだ。
今回の取材を通して一番感じたのは、「まずやってみること」の大切さだ。知らない世界についてあれこれ想像するよりも、まず扉を開いてみよう。そうすれば、必ず世界が広がる。「若いうちは何事も経験」だ。これからも知らない世界にどんどん飛び込んでいきたい。
3大学合同 有志学生記者
取材、記事、写真:横浜市立大学4年 鈴木光平、東洋大学4年 青天目(なばため)光、獨協大学 篠原誠宏