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【Q&A】「一票の格差」 繰り返される訴訟 強まる平等重視

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【Q&A】「一票の格差」 繰り返される訴訟 強まる平等重視

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2012年_衆院小選挙区の「一票の格差」=※衆院選は第46回。2012(平成24)年11月16日解散、12月4日公示、12月16日に投開票  昨年12月の衆院選の「一票の格差」をめぐり、最高裁大法廷は、違憲状態とする判決を言い渡しました。

 Q そもそも「一票の格差」とは

 A 現在の小選挙区制では1つの区から1人の議員が選ばれますが、区割りは人口に完全比例しておらず、都市部の選挙区では地方より有権者数が多くなっています。一票の価値は都市部では軽く、地方では重くなる格差が生じています。

 憲法14条は「すべて国民は、法の下に平等」と定めています。一人一人の投票価値が選挙区で異なるのは違憲だとして、選挙無効を求める訴訟が繰り返されてきました。

 Q 裁判所の判断は

 A (1)合憲(2)違憲状態(3)違憲-の3つの判決があります。一票の価値に著しい不平等が生じていると違憲状態ですが、格差を是正するには法改正などに時間がかかります。必要な時間が十分あったのに国会が放置したと判断されれば違憲となります。格差が憲法の求める範囲内なら合憲です。

 Q 違憲でも選挙は無効にならないのですか

 A 最高裁は初めて衆院選を違憲とした1976年の判決で、公益を著しく損なう場合は無効を回避できる「事情判決の法理」を適用しました。訴えが起こされた選挙区だけを無効にしても、全選挙区を対象に公選法の区割りを改めなければ根本的な解決にはならず、大混乱を招くからです。

 以降は、違憲でも選挙自体は有効とする判決が定着しました。しかし、今回の訴訟では高裁で戦後例のない無効判決が2件言い渡されました。

 Q 厳しい内容です

 A 司法が一票の平等を重視する姿勢は強まっています。最高裁は2011年3月、最大格差が2.30倍だった09年の衆院選を違憲状態と判断し、47都道府県にまず1議席を配分する「1人別枠方式」の速やかな廃止を求めました。

 これに対し、国会が小選挙区定数を300から295に減らす「0増5減」をし、1人別枠を条文から消す選挙制度改革関連法を成立させたのは昨年11月の解散当日。翌月の選挙に区割りは間に合わず、最大格差は2.43倍に広がったのです。

 Q その後、格差は解消されたのですか

 A そうとも言えません。0増5減に伴い、10年の国勢調査に基づいて17都県42選挙区の線引きが見直されました。ただ人口の最大格差を現行制度が基本とする2倍未満にぎりぎり収めただけ。選挙区によっては既に2倍を超えているとの試算もあります。

 ≪最大2.097倍 「党利党略」絡み改革進まず≫

 「一票の格差」是正のための衆院選挙制度改革の政党間協議は、「党利党略」が複雑に絡んで遅々として進まない現状を打開する方策は見えない。

 安倍晋三政権発足以降、首相は経済や安全保障政策を重要課題と位置付け、選挙制度改革の優先順位が低かったことは否めない。1月の就任後初の所信表明演説では全力で取り組む課題として経済再生や東日本大震災からの復興を挙げたが、選挙制度改革には触れなかった。

 通常国会閉会日の6月26日の記者会見で、有識者による第三者機関の国会設置をようやく提案。通常国会中に定数削減を含む選挙制度改革の結論を得るとした自民、公明、民主の3党合意が実現できなかったためだが、参院選対策との思惑があったのは間違いない。

 首相提案にもかかわらず、自公民3党による実務者協議では民主党が「まず各党で改革の方向性を議論すべきだ」と難色を示し、第三者機関設置の議論は当面見送ることになった。自民党内にも実効性を疑問視する声があり、棚上げされた。

 しかし、格差是正は一刻の猶予も許されない状況だ。総務省が8月28日に発表した今年3月末現在の住民基本台帳人口を基に衆院小選挙区の一票の格差を試算すると、最大格差は2.097倍で、格差2倍以上の選挙区は9に上る。正式には2015年の次回国勢調査に基づく計算となるが、格差は2倍以上になると確実視されている。(SANKEI EXPRESS

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