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【一票の格差】最高裁「昨年衆院選は違憲状態」 違憲回避も厳しい見方相次ぐ

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【一票の格差】最高裁「昨年衆院選は違憲状態」 違憲回避も厳しい見方相次ぐ

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最高裁の衆院選「一票の格差訴訟」の判決を受け、記者会見する升永英俊(ますなが・ひでとし)弁護士(右から2人目)らのグループ=11月20日、東京都千代田区霞ケ関の司法記者クラブ(大山実撮影)  ≪0増5減に一定評価≫

 「一票の格差」が最大2.43倍だった昨年12月の衆院選は違憲だとして、2つの弁護士グループが選挙無効を求めた16件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允(ひろのぶ)長官)は11月20日、「投票価値の平等に反する状態にあったが、合理的期間内に是正がされなかったとはいえない」として「違憲状態」と判断した。選挙無効の訴えは退けた。

 14人の裁判官のうち11人が「違憲状態」、3人が「違憲だが選挙は有効」との意見を述べた。

 選挙は、最高裁が2011年に「違憲状態」と指摘した09年選挙と同じ区割りで実施され、判決から選挙までの約1年9カ月間の国会の取り組みをどう評価するかが最大の焦点だった。

 最高裁は11年、都道府県に1議席を割り当て、残りを人口に応じて配分する「1人別枠方式」が格差の主因と指摘し、速やかな廃止を求めた。昨年11月の衆院解散当日に、1人別枠方式を条文から削除し小選挙区定数を「0増5減」する緊急是正法が成立したが、選挙には区割りが間に合わず、最大格差が2.30倍から2.43倍まで拡大した。

 20日の大法廷判決は、選挙前に是正法を成立させ、選挙後には是正法に基づく区割り改定で格差が2倍未満まで縮小したことを「是正実現に向けた一定の前進」と評価。憲法上要求されている合理的期間が過ぎたとはいえないと結論づけた。

 一方で、是正法の内容について「2011年判決の趣旨に沿った選挙制度の整備が十分に実現されているとはいえない」と判断。新たな区割りについては「1人別枠方式の構造的問題が最終的に解決されているとはいえない」として、さらなる区割り見直しを求めた。

 山本庸幸(つねゆき)裁判官は「0増5減」法案の審議当時、内閣法制局長官だったことを理由に審理から外れた。

 ≪違憲回避も厳しい見方相次ぐ≫

 昨年12月の衆院選をめぐる最高裁判決は、格差是正に向けた国会の取り組みの“質”を重視。「一票」の重みに格差があったことを認めつつも、解散当日に駆け込み的に成立した緊急是正法を「一定の前進」と評価し、現行制度で初となる「違憲」判断までは踏み込まなかった。ただ、最高裁裁判官からは厳しい見方が相次ぐなど、国会の姿勢への疑問も残る。

 判決は従来の「一票の格差」訴訟と同様、(1)著しい不平等状態にあるか(2)是正のための合理的期間を経過したか-の2段階で判断。昨年の選挙は、最高裁が2011年に「違憲状態」と指摘した区割りのまま行われたため、事実上の争点は(2)で、11年判決から選挙までの約1年9カ月間が「合理的期間」に当たる。この点の判断に当たり、最高裁は今回の判決である判断基準を示している。

 判断に当たっては、合理的期間の長短だけでなく、是正のために採るべき措置の内容▽そのために検討を要する事項▽実際に必要となる手続きや作業等の諸般の事情-を総合考慮するとしている。今回は、(1)解散当日に緊急是正法が成立したこと(2)選挙後とはいえ議員の本来の任期(8月)までに区割り改定法が成立したことが「努力」と評価された。

 ただ、この点について裁判官の意見は割れている。

 大橋正春裁判官は「11年判決直後から真摯(しんし)な努力をしていれば、約1年9カ月の間に区割り規定を改正することは可能だった」として「違憲」と主張。木内道祥(みちよし)裁判官は「選挙は違憲で、今後の国会の動向いかんでは選挙無効がありえないではない」と言及した。

 最高裁の判断を受け、安倍晋三首相は11月20日、官邸で記者団に「判決を厳粛に受け止めている。これから判決内容を精査したい」と語った。ただ最高裁の判断が、直ちに選挙制度改革を要する「違憲」とならなかったことで政府与党の制度改正に向けた熱意は薄い。(SANKEI EXPRESS

 【判決骨子】

・昨年(2012年)衆院選の選挙区割りは憲法が求める投票価値の平等に反する

・「0増5減」の法改正は一定の前進

・選挙までに格差を是正できなかったことは違憲とまではいえない

・1人別枠方式の構造的問題は残り、さらなる是正が必要

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