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バブル中国、大量売れ残り それでも続く不動産の「錬金術」

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バブル中国、大量売れ残り それでも続く不動産の「錬金術」

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 【国際情勢分析】

 中国で改めて不動産バブル懸念が強まっている。中国国家統計局がまとめた9月の住宅価格統計によると、新築住宅価格指数(公共性の高い低価格住宅は除く)は、主要70都市のうち65都市までが8月に比べて上昇。北京、上海、広東省広州、広東省深センの4大都市は平均して1カ月で1.4%の上昇となった。

 この数字は“微増”と読めるかもしれないが、実は4市の指数を1年前の昨年9月と比べると、それぞれ20.6%、20.4%、20.2%、20.1%上昇と高騰ぶりが浮き彫りになる。

 経済成長率が鈍化しているはずの中国で、不動産価格がかくも押し上げられている原因として、国際通貨基金(IMF)は7月に公表した対中国年次経済審査報告書で、地方政府による開発案件を問題視。「中国の不動産市場は歪(ひず)んでおり、バブルの傾向がある」と警告した。

 地方政府の財源

 中国の不動産開発は実際“錬金術”に近い。すべての国土が国有地である共産国家では、都市化やインフラ建設の名目で地方政府が安価な補償で農地を強権を使って収用し、道路や鉄道など交通インフラ建設を行った上で、商業地や工業用地などとして高値転売することで、巨額の差益が転がり込むしくみ。

 地方政府にとって不動産開発は欠かせない財源で、底知れぬ腐敗の温床ともなっている。

 一方、使用権を売却する予定の不動産を担保に、インフラ建設のための多額の借り入れを行っている。それも国有銀行からの通常の融資基準をクリアできない案件においては、「シャドーバンキング(影の銀行)」と呼ばれる金利の高い資金をかき集めているのが実情。

 不動産市況の悪化や、使用権が売却できなかった場合には、地方政府に巨額の借金が残され、返済できない事態に陥れば、貸し手にとって巨額の不良債権となる。

 中国紙、金融時報は、地方政府が借入金の返済原資に土地使用権売却による収入を当てにしているため、不動産価格をつり上げようとの思惑が働き、全土で不動産バブルを招いた、との専門家の見方を伝えている。

 表面化しない市況悪化

 そもそも中国で不動産バブル問題が強く認識されるようになったのは、2008年のリーマン・ショック後に中国政府が打ち出した4兆元(約64兆円)の大型景気対策と金融緩和がきっかけだ。中国は一連の対策で金融危機を乗り切ったが、実需を上回る乱開発で、新築住宅が大量に売れ残って地方都市で「鬼城」とも呼ばれるゴーストタウンが、あちこちに出現した。

 地方政府と影の銀行を作り出している金融機関など、既得権益層が不動産価格のつり上げをあの手この手で演出しているためか、広範囲な市況悪化は表面化していない。

 だが今後、何かのきっかけで市況下落が連鎖的に起きた場合、IMFでは中国国内での貸し倒れによる損失は20兆元(約320兆円)、米ゴールドマン・サックスは18兆6000億元にのぼると試算した。

 バブル崩壊はいつ?

 欧州格付け会社フィッチ・レーティングスは、中国が抱える債務は不動産を中心に、17年末までに国内総生産(GDP)の250%に達すると予測。膨張し続ける債務が中国経済自体を圧迫するリスクを指摘した。

 そうした懸念から、中国政府がバブル経済を正常化する構造改革を進めるとすると、不動産抑制策が景気悪化を招く懸念があり、中国政府は改革と景気のどちらを優先するべきか、ジレンマに陥っている。

 ただ、市場では「李克強(り・こくきょう)首相は改革路線を微妙に軌道修正し、景気回復のため住宅市場の過熱を容認するはずで、不動産は“買い”が続く」(業界関係者)との見方が強く、高騰に拍車をかける。

 需要と供給の関係で決まる市場原理から踏み外したところで上昇が続く中国の不動産。バブル崩壊が一気に来るのか、部分的に始まるのか。あるいはバブルまで飲み込む勢いで膨張が続くのか。

 地方政府や影の銀行に連なる闇の経済…。どこからか不気味な笑い声が聞こえてくるようだ。(上海 河崎真澄/SANKEI EXPRESS

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