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「高層ビルの呪い」中国経済を襲う? 不動産バブル限界、安全性も疑問

 高層ビルが建設されると、そこに経済不況が訪れる「高層ビルの呪い(skyscraper curse)」と呼ばれる歴史的なジンクスがある。

 ニューヨークで1931年に完成したエンパイアステートビル(443メートル)は29年からの世界恐慌、98年に完成したマレーシアのペトロナス・ツインタワー(452メートル)は97年からのアジア通貨危機にタイミングが重なる。森ビルが上海に建設した中国一の高さの上海環球金融センター(492メートル)も2008年の完成直後、米国発のリーマン・ショックに見舞われた。

 バベルの塔をほうふつ

 だが上海ではいま、間もなく次の「呪い」が襲ってくるのではないか、との懸念が広がっている。上海環球金融センターの隣に、竜が空に昇る姿をイメージした外観の高層ビル「上海中心大厦」が建設されているからだ。8月初めに高さ580メートルの本体構造の建設が完了。アンテナなどの付属物を含む最終的な高さが632メートルと、上海環球金融センターを大幅に超える計画で、15年にも完成予定だ。

 地元紙によると、08年に着工した上海中心大厦の建築面積は、地上部分が41万平方メートル、地下部分が16万平方メートル。やはり隣接している金茂大厦(88階建て、高さ421メートル)の約2倍の規模。上海環球金融センター(101階建て)の約1.5倍の規模という。上海中心大厦は125階建てで、オフィスビルや高級ホテルなどが入居する予定だ。

 だが、中国の不動産バブルも限界に達しており、一方で銀行が簿外で資金運用する高利回りの商品など「影の銀行(シャドーバンキング)」が一気に不良債権として顕在化すれば、高度経済成長を誇った中国経済は土台から崩れることになる。

 旧約聖書の創世記11章に登場する「バベルの塔」の伝説を思い起こさせる。人間が天に達するほどの高い塔を建てようとしたことに神は人間の自己神格化の傲慢さを憎み、人々を混乱に陥れて工事を中止させた。

 バベルの塔は、傲慢さに対する戒めや、実現不可能な計画の意に用いられるが、高層ビルの建設計画が、その国の富の蓄積や住民の過剰な自信(言い換えれば傲慢さ)を象徴していると考えると、伝説や呪いもどことなく真実味を帯びてくる。

 「突貫」202階建てに待った

 一方、中国ではさらに、世界一の高層ビル計画もある。湖南省長沙で、高さ838メートルとアラブ首長国連邦(UAE)ドバイの「ブルジュ・ハリファ」を10メートル上回って世界最高層になるビル「天空都市」だ。外壁や床などを事前に工場で組み立てるモジュール式、工期はわずか10カ月。14年の完成を目指す。

 建設するのは民間企業の遠大科技集団。地上202階建てで建築面積は105万平方メートル。住宅4450戸、ホテル250室や、小中学校や病院なども整備する計画だ。遠大科技集団は2年前に湖南省内でモジュール式によって30階建てホテルを15日間で建設した実績があり、世界一の高層ビルでも自信を示していた。

 遠大科技集団は先月(7月)、着工式典を行ったが、さすがにこれには地元当局が、法律に基づく建設認可手続きを取っていないとして待ったをかけた。専門家らから、地震や強風に対する安全性などを疑問視する意見が相次ぎ、90億元(約1440億円)に上る建設資金の調達も不透明だ。

 新華社電によると、中国には高さ152メートル以上のビルは12年に350棟を突破した。600メートルを超える高層ビル建設は広東省深セン(660メートル)や湖北省武漢(606メートル)などでも進んでいるが、オフィスやホテルの実需がどこまであるのか、採算性を無視した、まず高層ビルありきの計画との批判も強い。

 「高層ビルの呪い」が現実にならないことを願っているが…。(上海 河崎真澄、写真も/SANKEI EXPRESS

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