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中国経済に暗雲、息切れ顕著に 「影の銀行」不良債権化を懸念

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中国経済に暗雲、息切れ顕著に 「影の銀行」不良債権化を懸念

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 【国際情勢分析】

 世界第2位の経済大国である中国の成長見通しに、暗雲が立ちこめている。中国国家統計局が7月15日発表した今年4~6月期のGDP(国内総生産)の実質成長率は、前年同期比で7.5%増に鈍化した。「世界の工場」として2桁成長を続けたかつての勢いはもはやなく、前政権が「保八」のスローガンとともに死守するとした8%成長を大きく下回る。習近平政権は、投資主導から消費が引っ張る経済構造へ転換を図り、成長鈍化が招く民衆の不満を和らげる狙いだが、欧米メディアは一党独裁体制による経済のソフトランディング(軟着陸)に懐疑的だ。

 5四半期連続8%割れ

 7月16日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(アジア版)は、「ゆっくりとブレーキを踏む中国」と題する社説を掲載し、中央政府が試みる経済構造改革には多くの難題が待ち構えているとの見方を示した。中国に関する最近の経済指標が弱含んでいたことから、7.5%という成長率が予想を上回る「ポジティブ・サプライズ」だったと指摘。中国の国家統計の信頼性にも言及しつつ、市場は中国経済の減速スピードが安定していることに安堵(あんど)することだろうと論評した。

 それでも、今回は2四半期連続の減速で、1~3月期の成長率7.7%から0.2ポイント下落した。8%割れは5四半期連続で、GDPを支えてきた輸出は、人民元の上昇や外需の落ち込みで息切れが顕著だ。

 一方、習近平政権は、リーマン・ショック後にとった大規模な景気刺激策には動かない構えを見せている。追加的な金融緩和は、地方政府の無駄遣いとなって財政赤字を膨らませ、不動産などの資産バブルを作り出すリスクもあるためだ。

 膨らむ「影の銀行」

 社説は、中国の経済成長率は6~7%が新たな基準になると分析。問題は、習近平政権が底とする7%を下回る成長率を容認する方針にうまく軌道修正できるかだ、との懸念を示した。中国政府が3月に設定した今年通年の成長率目標は前年比7.5%。成長のさらなる鈍化で雇用情勢が悪化すれば社会不安が高まりかねず、中央は追加景気刺激策に追い込まれてバブルを作り出すという悪循環に陥ることになる。

 国際紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(アジア版)も7月16日付の紙面で中国の成長率を取り上げ、中国内でのノンバンク「シャドーバンキング(影の銀行)」による融資の不良債権化に対する懸念にも言及した。習近平政権が、不動産バブルなどの抑制策として金融引き締めを進める一方、地方政府などが自らの権益維持と拡大からインフラ投資の資金にこれらノンバンクからの借り入れを膨らませているとみられている。

 構造転換は遠い道のり

 記事は「中国中央政府は、規制対象の銀行システムを外れて不透明に行われている大規模な貸し出しに対応していく必要がある」と指摘した。成長と金融の安定というトレード・オフの関係にある課題を同時に追及する必要があり、微妙なかじ取りを迫られているというわけだ。

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(アジア版)も16日、中国の統計発表を受け、経済成長の減速は、消費拡大による経済構造転換を中国に突きつけているとの解説記事を掲載した。最近の小売り部門の伸びは、主に商品価格の上昇によるものだと指摘。中国国家統計局が発表したGDP成長への消費の寄与度は13年上半期が45.2%で、昨年通年の51.8%から後退している。記事は、年金制度の未整備などから家計の資金がなかなか消費に回りにくい構造的な問題を挙げたうえ、習近平政権が掲げる経済成長の量から質への転換は「遠い道のりだ」との見方を示した。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS

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