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遺伝子解析サービス拡大 がんなど疾病リスクを一度に検査

ニュースカテゴリ:暮らしの健康

遺伝子解析サービス拡大 がんなど疾病リスクを一度に検査

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 加齢に伴い気になるのが、がんや糖尿病など生活習慣病だ。生活習慣が影響する疾病のなりやすさや自分の体質を遺伝子解析で判定するサービスが拡大してきた。医療機関を介さず、利用者が申し込むサービスはこれまでもあったが、一度の検査で複数のがんや他の疾病、体質など、多項目の結果が提示されるという。(日野稚子)

 結果は1カ月後

 「結果を見たら生活習慣を改善するきっかけになる。将来の健康のために自分の情報が欲しい、という人向けのサービス」と話すのは、遺伝子解析サービス「ディアジーン」を提供するエバージーン(東京都新宿区)遺伝子ビジネス部の岩崎奈緒己部長。女性向け健康情報サイト「ルナルナ」を運営するエムティーアイ(同)の子会社で、今月から提供を始めた。

 ディアジーンで分かるのは、胃や肺、食道や大腸など8種類のがんと、2型糖尿病や心筋梗塞、骨粗鬆(こつそしょう)症、筋肉の質など生活習慣病や体質の傾向。専用サイトから申し込むと数日で唾液採取キットが届く。遺伝子解読は国内の遺伝子検査専門会社が行い、約1カ月後、データを基にした結果が専用サイトに表示される。疾患に関係する遺伝子と、その遺伝子中に含まれる変位(遺伝子多型)による病気のかかりやすさ(遺伝的リスク)、日本人の発症頻度などを明記する。

 遺伝子多型の違いによる罹患(りかん)リスクは、発症者と非発症者の遺伝子多型を比較して得られた研究知見。こうした調査研究を活用、他の人と比べたときの遺伝的リスクの高さを数値で示され、現時点で発症しているかを判定する検査ではない。費用は、がん関連で32、生活習慣病・体質関連は50の遺伝子を基に、がん8種解析で9800円、がんと生活習慣病の計27種解析なら2万9800円。

 一度の遺伝子解析で複数のがんに関する遺伝子リスク情報を提供する消費者向けサービスはディアジーンが国内初。しかし、乳がんや卵巣がんなど、遺伝子の有無で発症率が変わる疾病は除外した。「例えば、家族性乳がんの場合、その遺伝子があるなら治療検討をせねばならず、医療診断と同じ意味」(岩崎部長)になるためという。

 自分を知る

 1月から同様のサービスを展開するのが東京大学系ベンチャーのジーンクエスト(文京区)。遺伝子約30万を解読、約5千の遺伝子多型を基に約200項目の遺伝的リスクや体質などを解析、4万9800円で提供する。高橋祥子社長は「疾患リスクや体質と遺伝子との関係は人種で異なる場合がある。科学的根拠とした文献が日本人でも同等のリスクと言えるのか。こうした解釈は科学研究の進展で刻々と変化するもの」とし、全項目で根拠論文や調査対象人種、判定したデータの信頼性も掲載した。

 同社も遺伝的要因が生活習慣などの環境要因より強い疾病は除外、がんは肺がんのみを調べる。社外有識者などで構成する倫理審査委員会からの「胃がんや大腸がんでも遺伝的要因が高い傾向にあり、利用者に誤解を与える可能性がある」との声に考慮したためだ。高橋社長は「自分の体質、疾患リスクを知ることは今後の対処を含め生活改善につながる。自分を知るツールになるよう提供結果を増やしたい」と話している。

 ■ガイドライン作りは「検討中」

 遺伝子検査ビジネスを所管する経済産業省生物化学産業課によると、国内の遺伝子検査を提供する事業者は増加傾向で、平成24年調査で738事業者。うち医療機関を介さず、消費者に直接提供するのは143に上るが、参入への許認可制度はない。

 同省研究会は昨年度、(1)遺伝子解析の質(2)判定の質(3)情報提供の方法-の3点を検討課題とし、提言をまとめた。米国では、(1)、(2)について疑問符が付いた業者が行政指導を受けた事例もあり、消費者保護の観点から「信頼のおけるサービスとして事業者が行うべき最低限を示した」(同課)。

 消費者から信頼される業界になるよう事業者向けガイドライン策定を求める声もあるが、現時点では未定という。

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