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公園で広がる中高年用「健康遊具」 健康づくり・老化防止へ自治体推進
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サイクル運動を行う男性。健康遊具は手軽に体力づくりができると人気を集めている=兵庫県伊丹市の瑞ケ池公園 公園で中高年が楽しめる遊具が増えている。ストレッチやツイスト、ジャンプ、屈伸などの運動ができる大人用「健康遊具」だ。少子高齢化で子供の公園利用が減少する一方で、公園に集う中高年が増加。健康づくりや老化防止に役立ててもらおうと、自治体が力を入れている。(横山由紀子)
今月2日、晴れた日曜日の昼下がり、兵庫県伊丹市の瑞ケ池(ずがいけ)公園の一角にある健康遊具広場には中高年が集まっていた。バーにつかまっての懸垂、ステップに乗って飛び跳ねる。背伸ばしベンチでは気持ちよさそうに反り返っていた。
ペダルをこいで下半身のサイクル運動をしていた大阪市淀川区の城戸正明さん(71)は先月、胃がんの手術をしたばかり。現在は公園近くに住む長女の嫁ぎ先で療養中だ。「散歩がてら公園に寄って実際に使ってみたら、良い気分転換になり、雨降り以外は毎日来るようになりました。これまで公園の遊具は子供のものだと遠慮していましたが、ここなら堂々と楽しみながら術後のリハビリができます」と話す。
前屈や足上げストレッチに励んでいた近くに住む70代の夫婦もほとんど毎日やって来るという。「家庭用の健康器具は長続きしないけど、公園だと解放感があって気持ち良い。ここで健康づくりができたら『医者いらず』で、医療費が倹約できますよ」と笑う。
一角は、もともと子供が交通ルールなどを身に付ける交通公園だった。しかし、施設の老朽化などで利用が減少。10年前には設備が撤去され、空き地となっていた。そこで、市が中高年の健康づくりに役立てようと昨年12月、17台の健康遊具を設置した。
伊丹市は平成10年頃から健康遊具の設置を始めており、市内約60の公園に数台ずつ計170台の健康遊具を設置。さらに、瑞ケ池公園に17台というまとまった台数を設置したことで、ちょっとした人気スポットとなった。公園内の瑞ケ池の外周約1・6キロのコースをウオーキングした後、利用する人も多い。
同市みどり公園課の今村勉課長は「身近な公園で日頃の運動不足を解消し、病気の予防などに役立ててもらいたい」と話す。
仙台市でも市内84の公園で、筋力アップに役立つ腹筋ベンチや懸垂平行棒などの健康器具を設置している。体力づくりなど介護予防に取り組む市民グループのメンバーらを中心に利用が進んでいる。同市介護予防推進室は「遊び感覚で気軽に体を動かすことで介護予防にもつながる」と期待している。
国土交通省の調査によると、全国の健康遊具は10年の5690台から22年には2万583台と、4倍近くに増えている。
その一方で、健康遊具を使った小学生や幼児が落下したり、衝突したりして、骨折や打撲などのけがを負うケースも報告されている。健康遊具の対象年齢は中学生以上だが、公園内にあるだけに子供が利用する機会も多く、同省では、健康遊具は子供用遊具とは別の場所に設置するなどの安全指針の改定を検討している。
同省公園緑地・景観課は「全国の公園で増えている健康遊具は高齢者の健康増進に効果があるが、対象でない子供が利用してけがをするケースもある。一層の安全対策を講じていきたい」としている。