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割安スマホ、携帯大手に料金引き下げ圧力も 加入急増で価格競争激化

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割安スマホ、携帯大手に料金引き下げ圧力も 加入急増で価格競争激化

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主なMVNO高速データ通信サービス  スマートフォン(高機能携帯電話)向けの割安な高速データ通信サービスで、価格競争が激しさを増している。NTTコミュニケーションズは4月から月額料金を値下げするほか、インターネットイニシアティブ(IIJ)も料金据え置きで利用できるデータ通信量を2倍にする。

 IIJではこのところ毎月の新規契約が1万件程度と増加ペースが加速。サービスの低廉化で各社の利用者が大幅に拡大することは確実で、NTTドコモなど携帯電話大手の料金引き下げ圧力になる可能性もある。

 NTTコムやIIJなどは、携帯電話事業者からネットワークを借りてサービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)として、割安なデータ通信サービスを展開する。

 通信量に制限を設けて効率的にネットワークを使い、料金の低廉化を実現。利用者は、顧客情報を登録した携帯電話用ICカード「SIMカード」を購入し、携帯電話事業者の制約がないSIMフリーのスマホやタブレット端末に差し込んで使う。

 売り場開設、人気に火

 ビックカメラなど大手家電量販店がSIMフリー端末の売り場を設けたことなどで人気に火が付いた。2012年2月に個人向けサービスを始めたIIJは、契約数が13年3月に5万件程度だったが、12月に約12万件に達した。

 今年に入っても毎月1万件前後のペースで増え、今月中に前年同月比3倍超の15万件を突破する見通し。スマホ利用者の料金への不満の声に応える形で利用者を増やしている。

 NTTコムが4月に値下げするサービス「OCNモバイルONE」は、最も安い月額プランで934円(税別、以下同)から900円にする。利用できるデータ通信量の上限を、1日当たり30メガバイトから50メガバイトに引き上げる。

 ほかの4コースも30~100円下げる。データ通信と、電話番号が「050」から始まるIP電話とのセット割引も始める。両サービスに加入した契約者とその家族を対象に、IP電話1回線の月額料金300円を半額にする。

 一方、IIJは、月額900円の最も安いプランで、料金を変えず、データ通信量を2倍の1ギガバイトに上げる。音声通話を加えたサービスも月額1900円で始めた。通話には30秒につき20円の料金が別途必要になるが、通話時間によっては、端末購入費用を除いた一般的なスマホの月額料金(約7000円)より大幅に安くなる。

 4月中旬にも番号持ち運び制度(MNP)に対応する。IIJは「これまでスマホ2台目とタブレット端末の利用が主なターゲットだったが、スマホ1台目も狙う」(サービス戦略部)と携帯電話大手に対抗していく。

 2社以外にも楽天の通信子会社、フュージョン・コミュニケーションズが提供5プランのうち利用者が多い2プランの月間通信量の上限を今月18日に引き上げるなど、MVNOの工夫を凝らしたサービスが相次ぎ登場している。NECビッグローブも値下げの検討に入った。

 認知度向上が課題

 総務省の調べではMVNOは延べ350社程度で、提供契約数は13年3月で1091万件。ただ、格安料金の個人向けスマホサービスは、そのうちまだ一部で、ドコモなど大手のシェアを奪うにはほど遠い。

 だが、通信料金の低下を促したい同省は、MVNOが携帯電話事業者に支払うネットワークの貸出料金の算定方法を13年度分から改め、12年度の約半分に引き下げた。半額のインパクトは大きく、民間調査会社MM総研の石塚昭久研究員は「料金値下げが相次ぐはず。現時点で1500万件近いMVNOの契約数は15年度に2倍超の3000万件程度に増える可能性もある」と予測する。

 総務省によると、02年から12年までの10年間、勤労者世帯(2人以上)の消費支出総額が景気低迷の影響で5.2%減少したのに対し、通信費は40.1%上昇した。消費支出に占める通信費の割合は3.6%から5.4%に高まり、家計を圧迫する。低価格サービスを提供するMVNOが受け入れられる余地は十分にある。

 一方、サービスの普及には課題もある。「低料金でサービスが受けられるにもかかわらず、なかなか利用者の理解が進んでいない」(上川陽子総務副大臣)点だ。実際、MM総研が昨年6月に実施したアンケート(有効回答数6万件)では73.8%がMVNOのサービスを知らないと答えた。サービスを知っているのは4人のうち1人という結果で、普及促進には認知度向上も不可欠だ。(佐藤克史)

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