海外上向き「日本に追い風」 日銀の黒田総裁、金利操作に自信

講演する日銀の黒田東彦総裁=26日午後、東京・大手町の経団連国際会議場
講演する日銀の黒田東彦総裁=26日午後、東京・大手町の経団連国際会議場【拡大】

 日銀の黒田東彦総裁は26日、東京都内で開かれた経団連の会合で講演し、海外経済が上向きつつあるとして「日本経済は『追い風』を受けてさらに前進していくことが可能な状況」と先行きに前向きな見方を強調した。

 日銀は9月に長期金利に誘導目標を設け、現在はゼロ%程度という低い水準で推移させる緩和策を実施している。トランプ次期米大統領への期待感から米長期金利は大幅に上昇したが、日本の長期金利は目標の範囲内に収まっているとして「(金融政策が)所期の効果を発揮している」と語り、新たな枠組みに自信を示した。

 日銀は同日、10月31日から11月1日に開いた金融政策決定会合の議事要旨を公表。9月会合以降の金融市場について、委員らが「(金利水準が)円滑に形成されている」との見解を共有していたことが分かった。

 黒田氏は講演で、新興国経済に成長の勢いが出てきたことに加え、先進国でも景気回復の動きが広がりつつあると指摘。トランプ氏の政策など不透明な要素があることは認めつつ「リーマン・ショック後の調整局面をようやく脱し、新たなフェーズに入りつつある」と述べた。

 海外経済が好転すると日本の長期金利にも上昇圧力がかかるが、日銀が低い水準で金利を抑えることができれば金利差拡大で輸出企業の後押しとなる円安も進む。黒田氏は適切な金利操作によって海外経済の回復を「より大きな『推進力』に増幅していくことが可能になる」と訴え、企業に積極的な投資を求めた。

 また物価上昇に不可欠な企業の賃上げに関しては労働需給が引き締まった状態にあるとして「賃金が上昇していく環境は十分に整っている」と促した。