日銀の黒田東彦総裁は5日、フランスの市場振興団体のパリ・ユーロプラスが都内で開いたフォーラムで、ITを活用した先進的な金融サービス「フィンテック」や超高速取引など金融上の技術革新の影響について講演した。
黒田総裁は、フィンテックが「金融サービスを変革する大きな潜在力を持っている」と評価。サービスが行き渡っていなかった途上国や新興国でもモバイルバンキングなどの活用を通じて、「普及が一気に進む可能性もある」と述べた。
一方で、「店舗や現金自動預払機(ATM)など有形・固定のインフラは、金融サービスを提供する必要条件でなくなってきている」との認識を示した。
また、情報技術の革新で超高速取引などが可能となった半面、「新たな取引は市場変動を増幅しているのではないか」と指摘した。
合わせて、仏中央銀行のフランソワ・ビルロワドガロー総裁も講演。フィンテックについて「消費者の信頼感とセキュリティーを無視してはいけない」と注意を呼びかけた。今年の欧州経済については、「テロ攻撃や英国のEU離脱、イタリアの国民投票否決など不確実性を経験した」と語った。そのうえで、イタリアの国民投票については、「結果を注視していきたい」と述べた。