政府が外国人観光客の目標人数を大幅に引き上げたのは、観光産業を「GDP600兆円に向けた成長エンジン」(首相)と位置付けているからだ。首相が掲げる新三本の矢「名目GDP600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」のうち、子育て支援や高齢化対策などの社会保障制度改革は政策効果が出るまでに一定の時間がかかる。一方、観光はインフラ整備からサービス業まで裾野が広く、景気回復へ即効性が期待できる。
日本経済は長年、高い技術力を背景に製造業が牽引(けんいん)してきたが、近年は新興国の攻勢にさらされている。他方、日本は「気候」「自然」「文化」「食」という観光先進国の4条件がそろっている。政府は観光産業のてこ入れで、円高株安の打撃を受けにくい筋肉質の経済への転換を図る。