【日曜経済講座】編集委員・田村秀男
2016年、世界の政治経済情勢を左右する鍵は、米金利と石油価格だとみる。米連邦準備制度理事会(FRB)による市場の利上げ期待は原油価格をさらに押し下げ、エネルギー収入が政府予算の5割近くを占めるロシアを苦しめる。中国の対外膨張を担う国有企業は人民元安で債務負担増と株暴落の泥沼に沈む。
グラフはFRBのドル資金発行残高と原油相場と中国最大の国有石油資本「ペトロチャイナ」の株価の変動を重ね合わせている。FRBは08年9月のリーマンショックのあと3度にわたって資金を大量増発する量的緩和(QE)を実施し、14年10月に打ち切った。QEと原油相場は見事に連動している。QEの終了観測が出始めた14年半ばから余剰ドルは市場から引き揚げ、原油価格は下落し始めた。利上げの動きの表面化とともに下落傾向は加速している。
ロシア経済は旧ソ連時代のエネルギー依存体質を受け継いだ。1980年代、当時の米レーガン政権は高金利によって石油相場を押し下げた。資金難のモスクワはワシントンが仕掛ける軍拡に対抗できなくなった。結末が91年のソ連崩壊である。