安倍晋三首相は5日開かれた「未来投資に向けた官民対話」で、自動運転車や小型無人機「ドローン」などの新技術の実用化に向け、規制緩和の検討を指示した。少子化で国内市場が縮小する中、成長軌道を確実にして「名目国内総生産(GDP)600兆円」を達成するには、革新的な技術への投資を通じ、新しい市場や需要をどこまで創出できるかがカギとなる。
安倍首相は会合で、「生産性革命を進める投資によって、世界に先がけた第4次産業革命を実現する」と意気込みを述べた。
会合では、自動運転の開発を牽引するトヨタ自動車の豊田章男社長が「競争力の観点から先端分野の研究開発投資に注力すべきだ」と述べるなど、新産業に対する投資への前向きな発言が相次いだ。
政府が最先端技術への投資に注目するのは、「スマートフォンがアプリの需要を生んだ」(甘利明経済再生担当相)ような、新たな需要創出の“起爆剤”としての期待があるからだ。円安などにより企業は内部留保や現金、預金を積み上げている。政府は、こうした企業資金を投資へ回すことを期待する。
ただ、企業の多くは必要以上の投資には慎重だ。リーマン・ショックを経験し、企業は経営悪化に備えて手元資金を残しておきたいとの意識が強い。新たな技術開発は失敗のリスクも高く、自動運転やドローンのように、安全性をはじめ社会の理解を得なければならない課題も多い。