1日の東京金融市場は7年4カ月ぶりの円安・株高水準となった。2日に公示される衆院選でアベノミクスの信を問う与党には追い風だが、米格付け会社ムーディーズが1日夕に日本国債の格付けを引き下げたことで円相場や金利は乱高下した。与野党は選挙戦中、金融市場の動きに神経をとがらせそうだ。(藤原章裕、万福博之)
■「120円」に警戒感
10月末の日銀の追加緩和後の1カ月間で10円程度も円安ドル高が進んだ。
追加緩和を決めた金融政策決定会合では反対派の委員が「円安が進めば、景気回復を下支えしてきた中小企業には悪影響」と批判。麻生太郎財務相も11月下旬、「(円安の)テンポが速すぎる」と異例の牽制(けんせい)発言を繰り出した。
日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁の発言も微妙に変化しつつある。11月下旬の名古屋市での記者会見では「(円相場は)経済や金融のファンダメンタルズ(基礎的な条件)を反映し安定的に推移することが望ましい」と発言。これまで繰り返してきた「円安は全体としてプラス」発言を封印した。
しかし、景気回復の期待が高まって利上げに向かう米国と、景気がもたつき金融緩和を続ける日本との金利差は今後広がるとみられる。みずほ証券の由井謙二・FXストラテジストは「選挙戦の間に120円台をつけてもおかしくはない」と分析する。