■【日曜経済講座】編集委員・田村秀男
あれよと言う間に衆院が解散され、総選挙が始まる。最大の争点はアベノミクスだ。打ち出されて2年近くになるアベノミクスの成果と問題点を検証してみよう。
まずグラフを見てほしい。平成24年10~12月期以降の日経平均株価と実質国内総生産(GDP)の伸び率、勤労者実質収入の伸び率の推移を追っている。実質とは、名目値から物価の上昇率を差し引いた正味の分だ。
アベノミクスが本格的に始動した25年初め以来、最も目覚ましい成果を挙げたのは株価である。株価は上昇を続けた後、今年前半の停滞を経て再び上向いている。「第1の矢」である異次元金融緩和によって日銀がおカネを大量発行すると外国為替市場で円の価値が下がる。円安は輸出企業や多国籍化した大企業の収益をかさ上げする一方で、ドルに換算した日本株に割安感をもたらす。こうして日本株売買の7割前後を占めるニューヨーク・ウォール街などの海外投資家を引き寄せ、国内投資家が呼応する。