戦後、モノづくりの現場を支えてきた親たちは子供に「大学を出てエンジニアになれ。職人を使う人間になれ」と盛んに勧めた。しかし大学を卒業してもまともな職につけない子供が溢れ、結局は親の小さな工場を手助けすることになった。
自らの手を動かすという点で「父親の仕事をコピー」したのだが、同時に新興国には負けないエッセンスとは何かを考え抜こうとしている。これが新しいタイプのスタートアップの背景だ。
振り返るとイタリアにはカロッツェリアという伝統がある。オーダーメイドのクルマを生産する工房だ。かつて自分だけのスタイルを求めるカーマニアが世界から集まった。その大手が量産車の限定版を生産したり、自動車メーカーにデザインやモデルを供給して栄えた時代がある。だが自動車メーカーの開発内製化が進み地位は低下し、現在、カロッツェリアは過去ほどに注目されない。
しかしながら、セッラウにみるように、そのスピリットは存続している。創造的なコンセプトへの執着心がイタリアの産業界を救う芽は残っている。
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ローカリゼーションマップとは? 異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。
安西洋之(あんざい ひろゆき) 上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih