まるで、獲物を求めて他国領を蹂躙(じゅうりん)する古(いにしえ)の狩猟民族のようだが、凶暴な中国の漁民と海上取締当局の連携による無体は目に余る。2012年4月、フィリピン海軍艦が違法操業中の中国漁船8隻を臨検した。現場の南シナ海スカボロー礁(しょう)は比ルソン島より230キロ、中国からは1200キロも離れている。その直後、中国海上取締当局は自国漁民逮捕を阻むべく監視船を急派。比中両国の海上取締当局艦船と漁船は2カ月間対峙(たいじ)し続けた。
比海軍によれば、中国漁民が密漁したのは高級中華料理に欠かせぬフカや地球最大のオオシャコ貝、珊瑚(さんご)など。いずれも食用・観賞用として高値で売れる高級品で、いずれも激減が懸念されている。背景には、中国経済の発展=収入・人口増が海産物需要を極端に押し上げる「中国人の成金・胃袋」問題が横たわる。1970年には5キロだった1人当たりの消費量が2010年には25キロになったのだから驚く。
数十カ国で「漁場荒らし」
結果は「海洋汚染」に「乱獲」が加わる自業自得が、2000年頃より、漁獲量の半分を占める沿岸漁業を次第に沖へ沖へと追いやっている。韓国には、黄海に2カ所の密漁取締拠点を建設する非常事態をもたらした。