プーチン氏がMDに懸念 日本側が少人数会合内容説明 遅刻は「余儀なき理由」
野上浩太郎官房副長官は15日夜、山口県長門市で行われた安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領の会談の概要について記者団に説明した。約3時間の会談のうち、冒頭の約1時間15分間にわたり両国外相らが同席して行われた少人数会合では、世界のさまざまな課題について日露両国が連携して取り組むことを確認した。
具体的には、首相は安全保障に関し「北朝鮮をはじめアジア太平洋地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中で、日露両国が互いの安全保障上の関心事項につき、率直な意見交換を行うことが重要である」と強調。両国間の防衛交流を継続させることで一致した。
北朝鮮情勢については、首相が核実験と長距離弾道ミサイル発射に対する国連安全保障理事会の制裁決議について「全面的かつ厳格な履行が重要」と主張。「ロシアと連携していきたい」と求めた。首相は日本人の拉致問題についても早期解決に向けたロシアの協力を要請した。
これに対し、プーチン氏は「北朝鮮に対し圧力をかけるとともに、6カ国協議の対話の場に踏み出すことが必要だ」と発言した。
また、首相は米国主導のミサイル防衛(MD)について「日本のミサイル防衛システムはもっぱら防衛的なものであり、周辺国・地域に脅威を与えるものではない」と説明したが、プーチン氏は懸念を示した。
ロシアが軍事介入したシリアとウクライナ情勢についても意見交換を行った。首相はシリア情勢について「人道状況のさらなる悪化を強く懸念し、人道支援を実施することが重要だ」と述べた。プーチン氏は話し合いによる解決に向けて「努力する用意がある」と応じた。
首相はウクライナに関しては、昨年合意した和平合意(ミンスク合意)の完全履行を求めた上で「全ての関係国の建設的な対応に期待する」と述べ、プーチン氏は「ミンスク合意の履行に向けてウクライナを含む関係国がしっかり取り組む必要がある」と述べた。
プーチン氏の到着が2時間以上遅れたことについては、ロシアのペスコフ報道官が「余儀ない理由」で遅れたと説明。同時に「会談が短くなることもなく、しっかりとした議論を行っていると考えている」と語ったという。
懸案の北方領土問題や平和条約締結交渉に関しては、少人数会合の後に通訳のみ同席した安倍、プーチン両首脳の会談で話し合われた。
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