「柏崎刈羽」を特別目的会社化 政府内で浮上 中部、東北電、日本原電出資案も

 

 東京電力ホールディングス(HD)の原子力事業の分社化をめぐり、政府内で柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)を特別目的会社(SPC)として切り出す案が浮上していることが15日、分かった。中部電力、東北電力、原発専業の日本原子力発電(原電)の3社に出資を求め、東電を含む4社の出資比率に応じ電気を配分する構想だ。ただ、新潟県で反原発知事が誕生し再稼働の見通しが立たなくなっており、大手電力側から慎重な意見も強まっている。

 共同調達で経費削減

 原子力部門の分社化は、経済産業省が「東京電力改革・1F(福島第1原子力発電所)問題委員会」で示した経営改革案の目玉だ。4社はいずれも沸騰水型軽水炉(BWR)を保有しており、核燃料・資材の共同調達や作業員の融通などでコストダウンが図れる。

 中部電は既に東電HDと共同出資会社「JERA(ジェラ)」を通じて火力発電部門の統合を進めており、原電は老朽化が進む東海第2原発(茨城県)を早く再稼働させたい思惑がある。

 さらに、柏崎刈羽原発がある新潟県を営業地域にする東北電が福島第1原発事故で信用を失った東電HDと並んで前面に出れば再稼働に向けた県民の理解を得やすい。同原発は主に首都圏に電気を送ってきたが、東北電が加われば発電コストが安い原発の電気をこれまで以上に地元に還元することも容易になる。

 一方、新潟県では10月の選挙で「福島第1原発事故の検証中は再稼働の議論はできない」と主張する米山隆一知事が誕生し、柏崎刈羽原発の再稼働は数年単位で遅れる恐れが出ている。柏崎刈羽が稼働すれば1基当たり年間1000億円程度の収益改善効果が見込めるが、停止のままでは維持費がかさみお荷物になる。

 否定的な声強く

 このため、原発事業での連携について「全く念頭にない」(東北電の原田宏哉社長)と否定的な声が強まっており、東電HD幹部も「他社にうまみがない」と話す。

 経産省の委員会では年内に東電の経営改革の方向性をまとめる。15日に開いた3回目の会合では、東電HDの広瀬直己社長が、原発や送配電部門で他電力会社と連携することで収益力を強化する改革の方向性を示した。

 会合は非公開。オブザーバー参加の広瀬社長は終了後、記者団に「再編などの効果を福島へどう還元できるか話した」と説明した。

 世耕弘成経産相は会合で「議論を踏まえ、具体化に向けて詰めていただきたい」と話した。

 原発部門は、再稼働が進まない中での人材確保や原子炉の共同技術開発、廃炉のための他電力やメーカーとの協力などを進める方針を強調。送配電部門は、供給エリアを越えた系統運用の連携や、資材の共同調達によるコスト削減などに取り組む意向を示した。

 ただ、「新潟ショック」が壁となり、原子力部門の分社化方針は盛り込めても、具体的な“嫁入り先”までは踏み込めない可能性が高い。